2026年5月26日、日本のNEC(日本電気株式会社)は、納期や数量の調整を自動化する「NEC 調達交渉AIエージェントサービス」をグループ会社へ導入し、4月から運用を開始したと発表した。独自の自動交渉AIを活用し、取引先との調達交渉を自律的に実施することで、業務効率化とサプライチェーン強化を目指す。
AIが納期・数量交渉を代行 95%で自動合意
NECが導入した「NEC 調達交渉AIエージェントサービス」は、部品や原材料の納期・数量調整をAIが自律的に行うサービスである。これまで調達担当者が実施していた取引先との交渉業務を自動化し、需要変動への迅速な対応と業務効率向上を支援する。
近年の製造業では、多品種少量生産やサプライチェーンの広域化によって調達業務が複雑化している。一方で、人材不足や業務の属人化により、十分な調整が行き届かないケースも増えていた。
こうした課題に対し、NECは独自の自動交渉AI(※)を開発した。同技術は人間が介在せず取引先と交渉を行い、双方の条件を踏まえながら最適な合意形成を支援する。これにより、過剰在庫の抑制や欠品防止、納期遅延回避などが期待されている。
正式導入に先立ち、2024年9月から10月にかけてNECグループ会社で実証実験が実施された。約1,300品目を対象とした検証では、自動合意達成率95%を記録。従来は数時間から数日かかっていた調整業務を約80秒まで短縮できたことから、2026年4月の本格運用開始につながった。
※自動交渉AI:AIが取引先との納期や数量などの条件調整を自律的に行い、双方にとって最適な合意形成を支援する技術。
調達AI時代へ 効率化の利点と依存リスク
今回の取り組みは、企業のAI活用が単なる業務支援から、自律的な業務遂行へ発展しつつあることを示唆している。特に調達部門では、膨大な取引先との調整業務が発生するため、自動化による生産性向上の効果は大きいと考えられる。
今後、同様の技術が広く普及すれば、担当者は定型的な交渉業務から解放され、調達戦略の立案やリスク管理など、より高度な業務へ時間を振り向けられる可能性がある。在庫最適化や供給網の安定化に寄与する可能性もあり、結果として企業の競争力向上につながることも考えられる。
一方で、調達交渉には数値化しにくい信頼関係や長期的な取引慣行が存在する。AIによる判断が拡大するほど、交渉ロジックの透明性や説明責任が重要になるだろう。また、システム障害や誤判断が発生した場合には、責任所在の整理が課題となる可能性もある。
将来的には、人間が戦略を担い、AIが実務交渉を担当する運用形態が広がる可能性がある。ただし、その実現に向けては、取引先を含めた運用ルールの整備やガバナンス強化が重要になるとみられる。AI調達の真価は、こうした課題への対応を進めながら実用性を高められるかにかかっていると言えそうだ。
関連記事: