2026年5月26日、クウジットと電通総研は、従業員のウェルビーイングを可視化し、AIによる行動変容支援まで行う新サービスの提供開始を発表した。学術研究をもとにした調査とAIコーチを組み合わせ、人的資本経営の高度化を支援する狙いがある。
AIで従業員の幸福度を分析・支援
今回発表されたサービスは、「ウェルビーイング調査」と「AIコーチ」を組み合わせ、従業員の状態把握から行動変容支援までを一貫して行う点が特徴である。
調査では、電通総研が蓄積してきた働きがいや自律型人材に関する研究知見と、クウジットのAI・データ分析技術を活用。武蔵野大学の保井俊之教授、立命館大学大学院の枝川義邦教授の監修を受け、従業員1600人規模の市場調査をもとに「職場環境ウェルビーイング構造」を整理したという。
特に注目されるのは、因果分析技術「CALC(※)」を活用している点だ。従来の従業員満足度調査では、結果の数値化にとどまるケースが多かった。一方、本サービスでは「信頼関係が創造性にどう影響するか」といった組織内部の関係性まで分析できるとしている。
また、組織状態を色で可視化する「ウェルビーイング・ブーケ」や、回答自体を内省体験へ転換するアンケート設計も導入された。さらに、AIコーチが従業員ごとに継続的な対話を行い、心理状態や行動変化を支援する仕組みも提供される。
両社は今後、戦略策定から実行、定着支援まで含めたウェルビーイングソリューションとして展開を進める方針を示している。
※CALC:ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発した因果分析技術。データ同士の単純な相関ではなく、「何が結果に影響しているか」という因果関係を分析できる。
AI人事は定着するか 利便と監視懸念
今回の取り組みは、日本企業における人的資本経営が、「測定」から「介入」へ向かう流れを象徴する事例の一つと言えそうだ。従来は、従業員満足度調査などによる現状把握を重視する企業が多かったが、今後はAIを通じて継続的に行動変容を支援する仕組みへの関心が高まる可能性がある。
特に、人材不足や離職率上昇が課題となる中、従業員の心理状態や働きやすさを可視化できる点は大きなメリットと考えられる。メンタル不調の早期把握や組織改善へ活用できれば、生産性向上や定着率改善につながる余地もあるだろう。
一方で、ウェルビーイングは個人の感情や心理に深く関わる領域であり、過度なデータ取得に対して警戒感を抱く従業員が出てくる可能性もある。AIコーチとの対話内容や心理データがどこまで企業側に共有されるのか、不透明さが残れば、運用次第では“監視ツール”として受け止められる懸念も指摘されそうだ。
また、AIによる助言が画一化した場合、従業員ごとの価値観や事情を十分に反映できない可能性もある。利便性だけでなく、プライバシー保護や運用ルールの透明化が、今後の普及を左右する重要な要素になりそうだ。
それでも、労働人口減少が進む日本では、「従業員が健康に長く働ける環境づくり」が、企業競争力を左右する要素の一つとして重要性を増している。今後はAIが人事領域でどこまで信頼を獲得し、組織運営の中で存在感を高めていくのか注目される。
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