中国テック大手アリババグループは年次イベント「アリババ・クラウド・サミット」で、新AIチップ「真武M890」を発表した。
米国の対中輸出規制が続く中、エヌビディア製品の代替となる国産AI半導体の開発を加速させる動きとして注目される。
真武M890、前世代比3倍性能で投入
2026年5月20日、アリババグループは新たなAIチップ「真武M890」を公開した。
開発を手がけたのは同社の半導体設計子会社であり、前世代モデル「真武810E」と比較して約3倍の性能を実現したという。
同チップは、AIエージェント向けに特化して設計された点が特徴である。
長期間のコンテキスト保持や、複数モデル間のリアルタイム連携を必要とするワークロードに対応し、大規模なメモリー処理と高速な通信要求を効率的に扱える構造を備えるとされる。
発表の背景には、米国による先端半導体の対中輸出規制強化がある。
中国テック企業は、エヌビディア製GPUへの依存を減らし、自社開発または国産代替チップの確保を急いでいる。
アリババもその流れの中で、自社クラウド基盤やAIモデル運用を支える独自半導体戦略を進めている格好だ。
同社は今回、複数年にわたる製品ロードマップも公表した。M890の後継として、2027年第3四半期に「V900」、2028年第3四半期に「J900」を投入する予定である。
V900はM890比でさらに約3倍の性能向上を見込むという。
あわせて、128台のアクセラレーターを単一ラックに搭載したサーバーシステム「磐久AL128」も披露した。
さらに、大規模言語モデル「Qwen3.7-Max」の最新版も公開され、高度なコーディング処理や長時間実行型エージェントタスク向けに設計されたことが示された。
中国AI半導体自立へ前進も課題残る
今回の発表は、中国AI産業が単なるモデル開発競争から、半導体、サーバー、AIモデルを含む垂直統合型の競争へ移行しつつあることを示していると言える。
独自チップを持つことで、クラウド事業者は外部サプライヤーへの依存を下げ、コストや供給リスクを管理しやすくなる可能性がある。
特にAIエージェント市場では、推論時間の長期化やメモリー使用量の増大が課題になりやすい。
こうした用途向けに専用設計された半導体が普及すれば、企業向けAI運用の効率化や安定性向上につながる余地もあるだろう。
一方で、性能向上の発表だけで実用競争力が確定するわけではない。
AIチップ市場では、ソフトウェア開発環境、互換性、エコシステムの成熟度が普及を左右する要因になる。
エヌビディアが優位性を維持している背景には、ハードウェア性能だけでなく、開発者向けツール群や運用基盤の広範な浸透がある。
また、中国企業による国産化推進は、米中技術競争の長期化とも密接に関係する。
今後、アリババがロードマップ通りに性能向上を実現できれば、中国国内におけるAI計算基盤の自給率向上につながる可能性がある。
その一方で、グローバル市場でどこまで存在感を拡大できるかは、性能検証や導入実績の積み上げに左右される局面になりそうだ。
関連記事:
アリババが「Qwen3.5」発表 業務とアプリ操作を自律AIが担う時代へ
