株式会社FRONTEOは国立大学法人東京科学大学と連携し、横浜キャンパス内にAI創薬拠点を開設したと発表した。
独自AIと細胞解析技術を統合し、創薬プロセスの高速化と成功確率の向上を狙う。
AIと細胞技術を融合、創薬を一気通貫化
2026年4月27日、FRONTEOと東京科学大学は、同大学横浜キャンパス内に「FRONTEO AI創薬エコシステム協働研究拠点」を2026年4月1日に開設したと発表した。
両者は2022年から疾病構造解析や創薬ターゲット探索で連携しており、その成果を踏まえ、基礎研究から社会実装までを一体化する体制を構築した。
本拠点の中核は、AIによる仮説生成と実験検証を循環させる「仮説検証ループ」である。
FRONTEOは方程式駆動型AI「KIBIT」を用い、疾患と遺伝子の非連続的な関連性を抽出し、標的分子候補や作用機序の仮説を構築する。
一方、東京科学大学はPLOM-CON解析法やリシール細胞技術を活用し、細胞レベルでの動的変化を解析しながら実験検証を担う。
FRONTEOが提供するAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」は、「KIBIT」を中核エンジンとし、標的分子探索の効率化を支援している。
これまでの実績として、従来約2年を要していた標的分子探索のプロセスを2日に短縮した事例が報告されている 。
また、すい臓がん研究では、約2万のヒト全遺伝子から標的分子候補17遺伝子を抽出し、in vitro試験により6遺伝子ですい臓がん細胞の増殖抑制を確認した実績がある。
今回の共同研究では、がん領域をはじめとするアンメット・メディカル・ニーズ(※)の高い疾患領域を対象とする。
※アンメット・メディカル・ニーズ:既存の治療法では十分な効果が得られない、あるいは治療手段が存在しない医療ニーズ。創薬研究における重要な対象領域とされる。
創薬の成功確率向上へ 産学連携の加速と課題
今回の拠点設立は、AI創薬の実用化を進めるうえで重要な一手となる可能性がある。
創薬では、データ解析で有望な候補を見つけても、実験での検証に時間とコストがかかり、研究開発の停滞要因になりやすい。
本拠点のように、AIによる仮説生成とバイオ実験を近い距離で循環させる仕組みは、創薬プロセスの効率化と成功確率の向上につながると考えられる。
特にKIBITによる「非連続的発見」は、新規標的の探索において差別化要因となる可能性がある。
既存の知識の延長では見つけにくい関連性を抽出できれば、従来とは異なる創薬シーズの創出が期待できる。
また、大学側にとっても研究成果の社会実装が加速し、産業界への技術移転が進む契機となるだろう。
一方で、課題も存在する。AIによる仮説の妥当性は最終的に実験で検証する必要があり、ウェット研究の精度と再現性がボトルネックとなる可能性がある。
また、創出された知的財産の帰属や商用化プロセスにおける調整も重要な論点となり得る。
今後は、製薬企業との連携拡大や導出を通じた事業化の成否が、取り組みの実効性を左右する局面に入るとみられる。
研究段階で得られた成果をどこまで産業応用へ接続できるかが焦点となり、外部パートナーとの協業体制や商用化スキームの構築が重要性を増していくと考えられる。
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