金融庁は米AI企業の新型モデル「ミトス」を巡る金融リスクへの対応として、官民会議を開催した。主要銀行や日銀が参加し、サイバー攻撃時の市場不安拡大を防ぐための対策加速を確認した。
ミトス巡り官民会議 対策加速へ
片山さつき金融相は2026年4月24日、銀行システムへの潜在的脅威が指摘される新型AI「ミトス」への対応として、官民連携会議を開催したと明らかにした。
会議には三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の幹部に加え、日本銀行の植田和男総裁も出席し、金融インフラ全体での危機認識を共有している。
同会議は金融庁の呼びかけで実施された初会合であり、「AI脅威に対する金融分野のサイバーセキュリティ対策強化に関する官民連携会議」と題された。
片山氏は「ミトス」を巡る件に関して、「今そこにある危機」と述べ、「金融界からもそういう声が出た」と説明している。
また、インシデント発生時の備えの重要性についても認識を共有し、作業部会を設置して協議を加速させることを確認したという。
さらに、「日本版プロジェクトグラスウィング(※)」を立ち上げ、事務方を中心に議論していく方針も示された。
なお、同月16日にワシントンで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議においても「ミトス」への関心は高かったという。米国側でも財務省や連邦準備制度理事会(FRB)が協議を進めている状況だ。
※プロジェクトグラスウィング:米アンソロピックが設立した、危険性の高いAIを一般公開せず、限定的に防御側へ提供することでサイバー攻撃を未然に防ぐ枠組み。AWSやApple、Google、NVIDIAなどが参画している。
金融安定とAI活用の両立が課題か
今回の官民会議を起点に、AIリスクを金融政策の中核課題として扱う流れが標準化するかもしれない。
生成AIの進展により、サイバー攻撃の高度化や自動化が進めば、従来の防御モデルでは対応しきれない局面が増える可能性がある。一方で、事前に枠組みを整備することで、金融システム全体のレジリエンス向上につながることはメリットにもなり得る。
ただし、規制強化には副作用も伴うだろう。
過度なリスク回避は金融機関のAI導入を遅らせ、業務効率化や新サービス創出の機会を損なう恐れがある。慎重姿勢を取りすぎれば競争力の低下を招く可能性も否定できない。
今後の焦点は、リスク管理とイノベーションのバランス設計にあると考えられる。インシデント対応体制の高度化に加え、AIリスクの定量評価や国際標準との整合が求められる局面に入ったと言える。
官民連携の枠組みが実効性を持つかどうかが、日本の金融システムの信頼性を左右するための重要な分岐点になりそうだ。
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