米国のAI関連企業であるIBM、Microsoft、Meta、Anthropicなどが、AI特許の共同利用を目的とする団体「SAIL(Shared AI License Foundation)」の設立を発表した。
基盤モデル開発における知財摩擦の低減が狙いである。
AI特許を非独占で共有 SAIL設立
SAILは、AI基盤モデル(※)に関連する特許を参加企業間で非独占的にライセンス供与する枠組みである。米国時間2026年4月8日に設立が発表された。
創設メンバーにはIBM、Microsoft、Meta、Anthropicといった主要AI企業に加え、Genentechも名を連ね、さらにeBayやTD Bank Groupがオブザーバーとして関与する構造となっている。
SAILのプレスリリースでは、近年、機械学習や自然言語処理、エージェントシステムなどの進展に伴い、AI関連特許の出願数が増加している現状が示された。実際、CIPHERによる全世界の機械学習特許出願の分析によれば、増加幅は過去10年で2000%以上に達するという。
この急増は技術進歩を促す一方、特許権の分散化によるライセンス交渉の複雑化やコスト増を招き、研究開発リソースの分散を引き起こしてきたとSAILは指摘する。
SAILはこうした構造的課題に対し、特許の「共有コモンズ」を形成することで対処するという。参加企業どうしが保有する特許群を相互に開放し、基盤モデル開発における自由度を確保することが目的だ。
SAIL加盟企業は2019年以降で3万3000件以上の特許ファミリーを取得・出願している。これらの資産の共同利用を可能とすることで、財団はAI開発の迅速化を狙う。
※基盤モデル:大規模データで事前学習された汎用AIモデル。自然言語処理や画像認識など多用途に応用される基礎的なAI基盤。
特許共有がAI競争を加速させるか
SAILの設立は、AI開発における「法的摩擦コスト」の低減という観点で重要な意味を持ち得る。特許紛争リスクが低下すれば、企業はより積極的に研究投資を行いやすくなり、開発スピードの向上につながる可能性が高い。
特にスタートアップや下流の応用企業にとっては、参入障壁の低下という直接的なメリットが期待される。
一方で、特許の共有化が競争優位性の希薄化を招くリスクも考えられる。コア技術の差別化が難しくなれば、企業間の競争軸はデータや実装能力、サービス設計へとシフトすることになるだろう。
また、非参加企業との間で新たな知財摩擦が生じる可能性も否定できない。
SAILが業界標準として定着するか、それとも限定的な連合にとどまるかは、今後の参加企業の拡大と運用実績に大きく依存すると考えられる。
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