東京都の株式会社Yoiiは、ゼロ知識証明と秘密計算を組み合わせた人狼ゲームを開発し、Ethereumテストネット上で公開した。研究は約2年半に及び、Ethereum Foundationの支援も受けている。
ZKPとMPCで人狼の信頼を暗号的に置換
2026年4月2日、Yoiiはマルチパーティ計算(MPC※1)とゼロ知識証明(ZKP※2)とを組み合わせた独自技術「zk-mpc」を用い、ゲームマスター不要の「トラストレス人狼」をSepolia上に公開したと発表した。
プレイヤーの役職や投票といった機密情報を秘匿したまま処理しつつ、その正当性を誰でも検証可能にした点が特徴である。
人狼ゲームは不完全情報ゲームの代表例であり、従来はサーバー運営者が全ての情報を管理していた。
この構造では、参加者が運営者を信頼する前提が不可欠だったが、匿名環境では不正の検知が困難という課題があった。今回の仕組みは、その前提を暗号技術で置き換える試みとなる。
技術的には、MPCが秘密情報を分散保持したまま計算を実行し、ZKPがその計算過程の正しさを証明する役割を担う。両者を組み合わせた「Collaborative Proof」により、内部データを開示せずに全工程の正当性を担保できる仕組みが構築された。
さらに、Ethereum上のスマートコントラクトが証明の検証と結果記録を担うことで、改ざん耐性と透明性を確保している。
ソースコードはオープンソースとして公開されており、最大9人でのプレイが可能となっているほか、金融や医療、AI領域での応用も想定されている。
※1 MPC:複数の参加者がそれぞれの秘密データを公開せずに、共同で計算結果のみを得る暗号技術。データを分割して保持することで情報漏洩を防ぐ。
※2 ZKP:ある計算や命題が正しいことを、その内容を明かさずに第三者へ証明する技術。プライバシーと検証可能性を両立する。
信頼不要の計算基盤が拓く未来と課題
第三者を介さずに結果の正当性を担保できる仕組みは、データ共有に慎重な分野で有効に機能する可能性がある。特に複数主体が関与する場面では、中央管理者への依存を減らすことで、意思決定プロセスの透明性向上につながる余地があると考えられる。
一方で、計算コストの高さは依然として課題となりうる。MPCとZKPはいずれも処理負荷が大きく、統合によって最適化の難易度が高まる可能性がある。
また、ブロックチェーン上での運用においては、ガスコストやレイテンシの影響も無視できない。リアルタイム性が求められるユースケースでは、Ethereumの遅延がボトルネックとなる可能性もある。
それでも、第三者に依存しない設計はデジタル社会の基盤を変え得るものであり、信頼を人からアルゴリズムへ移す流れはWeb3領域で今後さらに加速していくとみられる。
ゲームという形での実装は、その実用性を示す一例と言えるだろう。
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