2026年3月、中国IT大手テンセントが2025年通年および第4四半期の決算を発表した。AI活用とクラウド事業の収益化が寄与し、純利益は2596億2600万元に到達。従来の広告・ゲーム依存からの転換が鮮明になった。
AIとクラウドが成長を牽引
テンセントの2025年通年売上高は前年比14%増の7517億7000万元、非国際会計基準(Non-IFRS)(※)ベースの純利益は2596億2600万元となり、市場予想を上回る結果となった。第4四半期も売上高は13%増、純利益は17%増と堅調に推移し、通期を通じて安定した成長を示している。
今回の決算で特徴的なのは、AI導入による事業効率の向上である。広告ではターゲティング精度が向上し、ゲーム領域では開発工程の効率化が進んだ。加えて、対話型AI「元宝」や業務支援ツール「WorkBuddy」など、AIネイティブなプロダクト群の展開も進み、収益機会の多様化が進行している。
さらに、長年収益性が課題とされてきたクラウド事業にも変化が見られた。法人向けサービス売上は2294億元に達し、クラウドは約20%の増収を記録。規模拡大を背景に、投資先行型から収益貢献型へと構造が転換しつつある。加えて、微信(WeChat)の月間アクティブユーザー数は14億人を超え、巨大な基盤を維持している点も見逃せない。
※Non-IFRS:国際会計基準とは異なり、一時的な損益や特定費用を除外して企業の実質的な収益力を示す指標。本業のパフォーマンス把握に用いられる。
収益多角化の強みと競争リスク
今回の決算は、テンセントの収益源が広告・ゲーム中心から、AIとクラウドを軸とした構造へと移行しつつある可能性を示唆している。特にクラウドの収益化は、ストック型ビジネスとしての安定収益につながる可能性があり、中長期の成長基盤として注目される領域といえる。
一方で、競争環境は依然として厳しい状況にある。クラウド分野ではアリババやファーウェイといった国内大手との競争が続いており、価格競争や投資負担の面で一定の圧力がかかる可能性がある。AIについても、プロダクト化は進むものの、収益寄与のタイミングや持続性については不透明な側面が残る。
今後は、AIとクラウドをどのように統合し、既存サービスと結びつけていくかが重要な論点の一つとなる。14億人規模のユーザー基盤を持つ微信を通じてAI機能を浸透させることができれば、競争優位につながる可能性もある。テンセントは、技術基盤を軸とした収益モデルへの移行過程にあると見ることもできる。
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