2026年2月19日、地域医療機能推進機構大阪病院と富士通Japan、フォーティエンスコンサルティングは、生成AIを医療・看護業務で安全に活用する協定を締結した。日本マイクロソフトの技術を活用し、退院サマリ作成など診療文書業務の効率化に乗り出す。
退院サマリ年1.6万件をAIで支援
三者は、生成AIを医療および看護業務全般に適用する共同プロジェクトを開始した。目的は、医療の質向上と働き方改革、さらに持続可能な病院経営の実現である。医療現場では業務負荷の増大と人材不足が深刻化しており、テクノロジー活用は避けて通れない課題となっている。
大阪病院では2024年11月から、日本マイクロソフトとフォーティエンスコンサルティングの支援を受け、議事録作成や検索拡張生成(RAG)(※)を用いた職員向けチャットボットを非診療領域で運用してきた。一定の成果を確認したことから、今回、診療領域へと適用範囲を拡大する。
第1弾として2026年6月より、年間約1万6000件に及ぶ退院サマリ作成と看護申し送り業務に、富士通の生成AI活用型医療文書作成支援サービスを導入する予定だ。加えて、生成AI活用に関する基本方針やガイドラインを策定し、教育プログラムも整備する。安全性と実装を同時に進める点が本件の特徴である。
※RAG(検索拡張生成):外部データベースを検索し、その結果を基に生成AIが回答を生成する仕組み。回答の根拠性や精度向上を図る技術。
効率化の利点と依存リスク、全国展開の可能性
本取り組みのメリットの一つは、医師や看護師の文書作成負担を軽減し、診療に充てる時間を確保できる可能性がある点にある。退院サマリの標準化が進めば、情報共有の質向上や医療安全の強化にもつながる可能性がある。人材不足が続く中、生産性向上策として有力な選択肢になり得る。
一方で、生成AIの出力を過信すれば、誤記載や文脈の誤解が見逃されるリスクも否定できない。医療情報は機密性が高く、セキュリティやプライバシーへの配慮が不十分であれば信頼を損なう恐れがある。最終責任を人が担う体制を維持できるかは、重要な論点となる。
日本メディカルAI学会代表理事の浜本隆二氏も、安全を担保しつつ現場負担軽減と品質向上を両立する体制構築は極めて重要だと評価している。今回の知見が体系化され全国へ展開されれば、医療DXの標準モデルとなる可能性がある。ただし、技術導入と同時にガバナンスと教育を継続的に更新できるかが、競争力に影響を与える要因になり得る。
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