国内のTISIと日本カードネットワーク(CARDNET)は、ステーブルコインを使った店頭決済の実証結果を発表した。円・米ドル建ての決済137件がすべて正常に完了し、加盟店への精算や経理処理を含む一連の業務についても、実証環境での運用を確認した。TISIは2027年度中のサービス事業化を目指す方針だ。
社員食堂で137件の決済成功、ガス代は中央値0.1円未満
2026年10月30日に発表された今回の実証は、9月1〜8日の平日6営業日、高田馬場のオフィスビルにある社員食堂で実施された。
入館できるCARDNETや協力会社の社員らを対象とし、62人が参加。日本円建てと米ドル建てのステーブルコイン(※)で計137件の支払いを行った。
利用者は一般的な個人向けウォレット、CARDNETは事業者向けウォレットサービスを使用した。食堂を加盟店とし、CARDNETが収納代行を担う3者スキームの仕組みを採用した。決済は有人レジに置いた専用端末で処理し、POSシステムとは連動させていない。
TISIが技術面、CARDNETが業務面を担当し、支払いだけでなく売上確認、加盟店精算、取引突合、資金管理、会計処理まで一連の流れを評価した。利用者や食堂スタッフへのアンケート、業務担当者による実務評価、決済ログの解析も行っている。
両社によると、全取引は正常に完了し、処理時間も社員食堂での運用に支障のない水準だったという。ブロックチェーン上の処理にかかるガス代は1件当たり中央値0.1円未満で、実証範囲では事業化を妨げる重大な課題も見つからなかった。
両社は今後、導入を検討する企業などに実証の企画・運営支援や決済システムを共同提供する方針だ。実証を基にしたデモも企画しており、TISIは利用者と加盟店向けの画面操作や運用面の改善を進める。
※ステーブルコイン:法定通貨などの価値に連動するよう設計されたデジタル資産。価格の安定を目指す点でビットコインなどとは異なる。実際の価値維持の仕組みや利用条件は銘柄によって異なり、決済時には対応ウォレットなどが必要となる。
低コスト決済に期待、一般店舗への普及には課題も
今回の成果は、ステーブルコイン決済を「支払えるか」だけでなく、「店舗の売上として処理できるか」という観点で検証した点に意義があると言える。加盟店は入金や帳簿との照合を日常的に行うため、決済完了後の業務まで確認できたことは、実際の導入を考える上で重要な前進となるだろう。
低いガス代は手数料削減の可能性を示すほか、精算の迅速化や訪日客の決済需要への対応も期待される。ただし、0.1円未満という数字はブロックチェーン上の費用の中央値であり、システム利用料や収納代行費用を含めた加盟店の総負担が同程度になるとは限らない。
また、今回は入館制限のある社員食堂で、POSと切り離した専用端末を使う小規模な実証実験だった。一般店舗での導入には、既存レジとの連携、混雑時の処理、返金や問い合わせへの対応など、幅広い条件での検証が求められるだろう。
2027年度中の事業化に向けては、こうした運用上の課題をどこまで解消できるかが焦点となりそうだ。決済速度だけでなく店舗側の作業負担と総コストを抑えられれば、新たな決済手段として採用が進む可能性があるだろう。
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