国内IT企業のTISIは、UPDATERと連携し、電力小売向け「エネLink」シリーズへのアワリーマッチング対応機能の実装を開始した。
再エネの発電量と使用量を1時間単位で照合し、2026年12月にSaaS型サービスの提供開始を目指す。
エネLinkに時間単位の電力照合機能を実装
TISIは2026年8月28日、GHGプロトコル(※1)のScope 2算定ルール改定を見据え、「電力CIS・小売基幹業務ソリューション」に新機能を追加すると発表した。
UPDATERの電力トラッキングシステム「ENECTION」が持つマッチングロジックとブロックチェーン技術を組み込み、再エネ発電量と電力使用量を時間単位で照合し、環境価値の追跡と証明を可能にする仕組みだ。
背景には、2027年末の最終改定公表に向け、GHGプロトコルにおけるScope 2算定ルールの見直しが進んでいることがある。
年間単位の環境価値調達に加え、将来的には1時間単位で発電量と使用量を一致させる対応が重要になる可能性があり、電力小売事業者にはシステム面での対応負担が生じる。
両社は2025年度からUPDATERの実データを用いて技術検証を進め、EnergyTag(※2)の要件を踏まえてアワリーマッチング(※3)が技術上可能であることを確認した。
UPDATERは600カ所以上の再エネ発電所と4,000カ所以上の需要施設で電力トラッキングを運用しており、TISIは30社への電力CIS導入実績を持つ。
こうした両社の既存基盤を生かし、「コーポレートPPA料金計算サービス」と組み合わせることで、発電量・使用量の管理からPPA分の料金計算、ポータルサイトや請求書を通じたマッチング実績の提示までを一体化できる。
TISIとUPDATERは2026年12月の提供開始を目指して機能実装を進め、将来的には再エネのアワリーマッチングを支える業界標準のプラットフォームとしての定着を目指す。
※1 GHGプロトコル:企業や組織の温室効果ガス排出量を算定・報告するための国際的な基準。Scope 2は、購入した電力や熱、蒸気などの使用に伴う間接排出を対象とする。
※2 EnergyTag:時間単位の発電情報を証明する「グラニュラー証書」の国際標準について、策定や認定を行う独立系の非営利団体。
※3 アワリーマッチング:電力の使用量と再生可能エネルギーの発電量を1時間単位で照合し、時間ごとの再エネ利用状況を確認・証明する仕組み。
再エネ調達の透明性向上へ 制度対応が焦点
今回の機能が実用化されれば、電力小売事業者は既存の顧客管理・料金システムを大幅に改修せず、時間単位の電力照合に対応しやすくなる。
SaaS型で独立導入できるため、初期投資や改修リスクを抑えながら、再エネ調達の透明性や証明力を高められる点は大きな利点だ。
特に、再エネ電力の発電時刻と使用時刻を細かな粒度で照合できれば、年間単位の環境価値だけでは把握しにくかった実際の需給関係を可視化しやすくなる。
企業にとっては、脱炭素施策の実効性をより具体的に示す手段となり、環境価値を説明する際の信頼性向上にもつながる可能性がある。
一方、GHGプロトコルの改定内容は現時点で最終確定しておらず、今後示される制度要件によっては追加対応が必要になる余地も残る。
また、時間単位で大量の発電・需要データを継続的に照合するには、データ連携の精度やシステムの安定性を確保することも欠かせない。
制度変更を先取りしたサービスが普及するかは、最終的な算定ルールとの整合性に加え、電力小売事業者がどこまで低負担で導入できるかに左右されるだろう。
アワリーマッチングへの移行が進めば、国内の再エネ調達は「年間でどれだけ確保したか」から「いつ発電された電力をいつ使ったか」まで問われる段階へ進むと考えられる。
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