米Googleは新AIモデル「Gemini 4 Carbon」を発表した。ソフトウェアの脆弱性を発見・検証・修正する能力を高め、複雑な開発作業の長期継続にも対応する。まず一部のサイバー防御担当者に提供する方針だ。
脆弱性検出88.2%、修正71.0%を記録
2026年10月28日に発表されたGemini 4 Carbonは、2週間前に登場した「Gemini 4 Argon」に続くモデルだ。Argonをベースに、Googleのフロンティアモデルとして発表された。
具体的な性能としては、外部評価「Artificial Analysis Intelligence Index」の最新版で59点を獲得し、首位となった。
特にサイバーセキュリティ分野の強化が図られており、脆弱性発見の「SEC-bench Pro」で88.2%、攻撃可能性を検証する「ExploitGym」で54.8%、修正能力を測る「CWE-bench」で71.0%を記録した。
いずれも安全上の制限を適用しない条件での評価で、Googleは「脆弱性検出、検証、修復において最先端の性能を達成した」という。
社内評価では、安全なコードの生成成功率がArgonの2倍超となった。大規模なコード群の不具合を探り、修正する作業を数日間続けた事例もあるという。
安全性の面では、悪意ある指示でAIを操ろうとするプロンプトインジェクション(※)への耐性も改善した。対象の評価試験では攻撃成功率が0.0%となり、社内の開発環境で検出された重大な不適切動作の警告も約80%減ったという。
今週から一部の防御担当者に提供し、「Fairwind Program」を通じて協力先へ段階的に拡大する。開発者や一般利用者への提供時期は未定だ。価格は100万入力トークン当たり2ドル、出力は10ドルを予定する。
※プロンプトインジェクション:AIが参照する文書やWebページなどに悪意ある指示を紛れ込ませ、本来の利用者の意図や設定されたルールから外れた動作を起こさせようとする攻撃手法。外部情報を読み取って作業するAIエージェントでは特に注意が必要となる。
自律的な防御作業に期待、悪用対策が課題
Carbonの進化が実運用でも再現されれば、AIを使ったセキュリティ対策は、脆弱性の発見だけでなく、危険度の検証や修正案の作成まで一貫して支援する段階に近づく。人手を要する調査を減らし、開発現場での対応を迅速化できる可能性がある。
特に重要なのは、長時間にわたる複雑な作業を継続する能力だ。大規模システムでは原因の特定と修正に複数の工程が必要となるため、途中で行き詰まっても作業を継続できるモデルは、保守運用の負担軽減につながりうる。ただし、試験環境での成績が、そのまま実際の開発現場での品質を保証するわけではない。
一方で、脆弱性を発見し、攻撃の成立を検証できる能力は、防御だけでなく攻撃への転用も懸念される。Googleが提供先を限定し、公開前の安全性評価や防御策の調整を進める背景には、こうした両用性への配慮があると考えられる。
今後の焦点は、能力の高さと利用範囲の拡大をどう両立させるかだ。誤った修正や権限を超えた処理を防ぐ仕組みを維持しながら、実務での信頼性を検証できれば、AIが継続的にソフトウェアの安全性を守る運用への道が開けるだろう。
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