2026年9月18日、日本コロムビアはAIテクノロジーと演歌を融合させた新レーベル「Neoこぶし」の立ち上げを発表した。伝統的な歌唱技法に最新技術を重ね、これまでの音楽制作の枠組みを超える新たな挑戦が始まる。
演歌の「こぶし」とAIが融合 新ジャンル「サイバー演歌」が始動
創業1910年の老舗レコード会社である日本コロムビアは、新ジャンル「サイバー演歌」を掲げる新レーベル「Neoこぶし」の設立を明らかにした。演歌特有の表現手法である「こぶし(※)」や独特の空気感に、高速なダンスビートと最新のAI技術を掛け合わせた全く新しい音楽表現の確立を目指す。
レーベルプロデューサーにはクラブシーンで実績を持つプロハンバーガー巨匠 Ex.高野政所氏が就任した。「演歌はもっと無茶していい」という方針のもと、クリエイティブ全般においてAIの本格導入を進める構想が描かれている。作詞や作曲、編曲のみならず、ビジュアル生成やMV制作に至るまでAI技術を全面活用する体制が構築された。
本プロジェクトには、第63回日本レコード大賞新人賞を受賞した実力派演歌歌手の望月琉叶氏に加え、AI技術から誕生したバーチャル歌姫の呼魂ひかり氏が参画する。リアルとバーチャルが対峙し、互いの表現をぶつけ合う斬新な試みが展開される。さらに、望月氏がプロデュースする5人組アイドル「ENKA GIRLS REVOLUTION」も加わり、演歌や童謡を現代的サウンドでアップデートした楽曲を世界に発信する。
※こぶし:日本の伝統的な歌唱法の一つで、音程を細かく上下させて装飾的に音を伸ばす表現技術。演歌において感情を揺さぶる要素として重宝される。
毎月4曲配信の超高速リリース 2027年にはVR合同ライブも展開
新レーベルの最大の特長は、AIテクノロジーを活用することで実現する圧倒的な制作スピードと作品数である。2026年10月1日のレーベル正式ローンチ時には、呼魂ひかり氏の『呼べば、ひかり』、望月琉叶氏の『ネオンしぐれ』、ENKA GIRLS REVOLUTIONの『ネオンしぐれ』という3曲が同時に配信リリースされる。
10月以降は毎月4曲という驚異的なハイペースで新曲を連続配信し、1年間で約50曲をリリースする予定だ。従来の音楽業界における制作サイクルを覆すスケール感で、スピード感を持った市場投入が図られる。また、2027年にはリアル空間と仮想空間が交錯するVR・リアル合同ライブの開催も計画されており、Web3時代に対応した体験型エンターテインメントの提供も期待できる。
一方で、AIを用いた大量生産の手法が音楽の質的価値や従来のファン層にどのように受け入れられるかについては議論の余地が残る。最新テクノロジーへの抵抗感を持つ層へのアプローチや、AIによる生成表現と人間独自の感情表現のバランスをどう保つかが今後の課題になりうる。しかし、市場の成熟が見込まれる中で、日本の伝統芸能に先端技術を組み込む今回の試みは、音楽ビジネスの新たな成長モデルを示す先進的な事例となる可能性がある。