2026年9月10日、NTT MEは長野県伊那市と共同で「橋梁点検システム」を開発・試行したと発表した。ドローンやAIを活用し点検計画から調書作成までを一元化することで、自治体の技術者不足や予算課題の解決を目指す国内の先行事例である。
ドローンとAIを融合 点検から調書作成まで一元化する新システム
国内に約72万橋存在する橋梁は、今後20年で建設後50年以上を経過する割合が約7割に達する見込みだ。法定点検を担う自治体や建設コンサルタントは、多大な工数や厳格な予算制約、深刻な技術者不足に直面している。従来のドローン点検では画像データの取得こそ可能だったものの、損傷箇所の抽出や帰庁後の調書作成に多くの工数を要する点が浮き彫りになっていた。
こうした課題に対し、両者が開発した本システムは業務フローの最適化を実現する。国交省のデータ基盤「xROAD(※)」と連携させた計画策定から始まり、現場での航行撮影支援、野帳対応、AIによる損傷抽出、さらには調書作成までを一つのシステムで完結させる仕組みである。
NTT MEが通信インフラ保守で培った現場知見を取り入れたAI学習モデルにより、コンクリートのひび割れや鋼材腐食の自動検知に加え、腐食減肉の推定まで可能となった。また全国500名の専属パイロットの知見を活かすことで、難所にある橋梁の安全な運航にも対応する。伊那市職員や現場技術者との共同検証を踏まえたUI/UX設計により、専門知識を有しない利用者でも扱いやすい現場一体型のシステムに仕上がっている。
※xROAD:道路インフラ管理の効率化を目的として国土交通省が整備を進める道路データ連携基盤のこと。
自治体インフラ管理のDX基盤へ コスト削減と安全確保の行方
2026年度より開始される本格的な有効性検証を通じて、自治体インフラ管理に大きな変革がもたらされると考えられる。最大のメリットは、700を超える橋梁を管理する伊那市のような自治体において、大型点検車やロープアクセスを伴う高コストかつ危険な作業を大幅に削減できると期待される点だ。
点検事業者の高所作業のリスクを低減させつつ、高齢化に伴う現場の技術者不足という構造的課題に明確な解を提示するだけでなく、市職員自らが行う小規模橋梁の点検効率化にも寄与する可能性が高い。
一方で、初期導入コストの負担感や、現場技術者がAIの判読精度をどこまで全面的に信頼・運用できるかという実効性の検証が今後のハードルになり得る。専門的な知見を持つ人材の育成や操作への習熟度維持も中長期的な運用上のリスクとして考慮すべき側面だ。
それでも、点検業務全体のDX推進は全国の自治体に共通する持続可能なインフラ管理への確かな一歩となるだろう。通信インフラの現場力とデジタル技術が融合した本モデルが各地に波及すれば、老朽化が進む社会基盤を守る新たな標準規格として定着していくと期待される。
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