2026年8月12日、韓国・現代自動車グループは、ソウルで開催した「AX Achievement Showcase」で、全社的なAI変革(AX)の成果と今後の方針を発表した。研究開発から製造、顧客対応までAI活用を広げ、次世代のフィジカルAI領域への展開を進める。
現代自動車、全社でAI活用を加速
現代自動車グループは2019年からデジタル変革を進め、AI活用に向けた業務・データ基盤を整備してきた。2022年にはJIRA、Dooray、Confluence、Microsoft 365を導入し、プロジェクト管理や情報共有を標準化。さらに「Global One Data Pipeline」によって研究、製造、品質、販売などに分散していたデータを接続し、AIによる意思決定に活用できる環境を構築した。
その基盤を生かし、独自の生成AI基盤「H Chat Pro」を2025年から一般社員へ展開している。ChatGPT、Gemini、Claudeなどを安全な環境で利用でき、2026年7月時点でアクティブユーザーは3万人超、現代自動車とKiaの一般社員の約80%に達した。文書作成や情報検索、データ分析に加え、AIエージェントを業務に活用する社員も増えている。
研究開発では「Crash Safety AI Assistant」を導入し、衝突試験結果や画像、技術分析データから関連事例を検索・比較できるようにした。これにより、事例の特定や分析資料の確認にかかる時間を従来比で約90%削減。製造では、車両識別を自動化するAIサービスを韓国、米国、欧州、インド、アジア太平洋地域の約70工程へ展開し、年間約52.4億ウォンのコスト削減を実現した。搬送カートの経路最適化でも、生産停止時間を約86%削減している。
顧客対応にもAIを広げ、海外サービス拠点では保守対応時間を約42%短縮した。顧客レビュー対応では、1件当たりの処理時間を35分から約5分へ削減し、2026年9月からは回答プロセス全体の自動化を計画している。
全社AI化の先にあるフィジカルAIの可能性
今回の取り組みのメリットは、生成AIを単なる作業効率化ツールとして扱うのではなく、研究開発や製造、サービス現場に蓄積された知識を組織全体で活用できる点にある。特にAIエージェントによって個人の経験や専門知識をデジタル資産として共有できれば、属人的だった業務の標準化や意思決定の迅速化につながる可能性がある。
一方、AIの活用範囲が現実の製造現場や車両、ロボットへ広がるほど、判断の正確性や安全性、データ管理の重要性は増すと考えられる。業務上の支援にとどまらず、物理的な設備や製品の動作にAIが関与する場合、誤判断が生産や顧客体験へ影響するリスクも高まる可能性があり、運用体制の整備が重要になるだろう。
今後、現代自動車グループは、これまで蓄積したデータや業務知識、AI活用の成果を車両、ロボット、製造、サービスへ広げる方針だ。全社でAIを使う文化を形成した上で、デジタル空間の業務効率化から現実世界を動かすフィジカルAIへ進めることができれば、モビリティ企業としての競争力をさらに高める可能性がある。
ただし、その成否はAIの導入数だけでは測れない可能性がある。現場の知識をどこまでAIへ組み込み、実際の事業成果へ転換できるかが重要になると考えられる。今回示された全社AXは、そのための基盤を構築する段階から、事業そのものを変革する段階へ移りつつあると言える。
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