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CBDCの現状、各国の推進状況と課題は? -2022年冬-

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目次

CBDCとは?

まずは「CBDC」の定義から確認します。「CBDC」は「Central Bank Digital Currency」の略であり、日本語訳すると「中央銀行デジタル通貨」と呼ばれます。

また、CBDCには、以下の3つの要素が必須と言われています。

(1)デジタル化されていること
(2)円などの法定通貨建てであること
(3)中央銀行の債務として発行されること

つまり、中央銀行が発行する、法定通貨にペッグされたステーブルコインの事をCBDCと呼びます。

(※厳密に言えば、ブロックチェーンを活用するしないに関わらず、国家が主体で発行するデジタル通貨をCBDCと呼ぶこともありますが、ここではブロックチェーンを活用したデジタル通貨であることを前提に話を進めています。)

日本であれば日銀(日本銀行)が発行するステーブルコイン「デジタル円」を、アメリカでは「デジタルドル」を、中国では「デジタル人民元」を、CBDCと呼びます。

ではなぜCBDCがここまで注目されているのか、簡単にステーブルコインの歴史も踏まえて振り返ってみます。

①:ステーブルコインの必要性が生まれる
ビットコインやイーサリアムなど、世間が注目する仮想通貨は次々と生まれましたが、価格変動が激しく、またスケーラビリティ問題もあり、なかなか日常生活での決済に活用されることは難しい現状です。 一方で、ブロックチェーンを活用した通貨という視点で見れば、国際送金の簡易さや手数料の安さ、運営コストの安さ、改竄できず透明性が高いなど、非常に多くの利点があることは間違いありません。 そこで、価格変動が激しくない仮想通貨としてステーブルコインが誕生しました。

②:ステーブルコインの誕生
ステーブルコインには大きく分けて2種類あります。ドルや円など法定通貨にペッグされたもの、そして独自のアルゴリズムによって価格を保つもの、この2種類です。前者で有名なのがドルにペッグされたUSDCやUSDTです。後者で有名だったのが、少し前に崩壊してしまったTerraです。 それぞれの特徴についてはここでは割愛しますが、ステーブルコインが誕生し、その利用のしさすさも相まって、web3業界の中で大きな広がりを見せました。

③:Facebook(現Meta)社によるリブラ計画の発表と頓挫
2020年、全世界に20億人以上のユーザーを持つ世界最大のSNS運営会社がステーブルコインの発行に乗り出しました。しかし、世界各国の金融庁から強い反発を受け、結果的に計画は頓挫しました。ここで”国家は一企業に通貨の運営権を握られる可能性がある”ことを認識し、強い危機感を覚えたと言われています。

④:CBDCの開発が本格化していく
世界的なDXの波、そしてリブラ計画によって、通貨の運用を一企業に担われることを恐れた国家が、自ら主体となってステーブルコインを始めました。それがCBDCです。

以上が、簡単なCBDC誕生までの背景です。

では続いて、各国のCBDC推進状況についてみていきます。

各国のCBDC推進状況は?

まずは世界的な取り組み状況について解説します。

国際決済銀行(BIS)が実施したサーベイ調査(2020 年 10~12 月)の結果を引用し、「各国中銀のCBDCへの取り組み状況」と「中銀のデジタル通貨の発行予定」を紹介させていただきます。

麗澤大学 経済学部 教授 中島真志 様の資料より引用

以上の資料をまとめると、3点がデータとして理解できます。

  • 84%が調査・実験に取り組んでいる。
  • 60%が実証実験まで移っているが、15%しかパイロット実験(≒最終実験,β版のような位置付け)を行なっていない。
  • 1~3年以内の短期的にCBDCの発行予定がある国は15%に絞られ、1~6年以内の中長期の発行予定は60%であった。

これらを整理し、世界的な情勢を整理すると国家としてCBDCの活用は模索していきたいが、すぐにオープンできる状況にはなく、様子見の状態が続いていることがわかります。

ではここからは先進主要国(日本・アメリカ・中国・ヨーロッパ)と先進的な取り組みを行なっている国の事例と状況を紹介します。

日本

日本(日銀)としては、CBDCリリースへ向けての具体的な日程は明示されていませんが、実証実験はスタートしている状況です。

  • 2020年10月:「中銀デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を発表
  • 2021年4月から1年間:概念実証フェーズ①(CBDCの発行、送金、還収の基本、機能の検証)
  • 2022年4月から:概念実証フェーズ②(CBDCの周辺機能の検証)
  • 日程未定:パイロット実験(実際に、店舗や消費者が参加する利用実験)

こちらの進捗状況や結果、今後の方針に関しては2022年5月に「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会 中間整理」が発表されていますので、ぜひそちらを参照ください。

アメリカ

GAFAをはじめとしてテクノロジーで世界をリードする企業が多いアメリカですが、CBDCの開発に関して政府はあまり積極的ではありません。日本と同様に具体的なリリース目標は明示されていません。

  • 2022年1月:FRBが「デジタル・ドル報告書」を発表
  • 2022年3月:バイデン大統領が各省庁に対してデジタル資産の研究開発の加速を命じる大統領令に署名
  • 2022年9月:米財務省がCBDCについての報告書を公表

このように、2022年に入ってやっと方針を発表した段階にあります。その報告書の中身を見てみても、まだ明確な指針は決定されておらず、CBDCのメリットと課題を列挙した内容に留まっています。しかし、CBDCだけでなく仮想通貨業界全体を推進させていく事が大統領令として署名された事もあり、今後のより早いスピードで開発が進んでいくことが想定されています。

中国

先進主要国の中で最もCBDCの実用化が進んでいる国です。すでにパイロット実験も終了しており、2022年1月にアプリとしてリリースされました。

  • 2014年 : CBDCの研究チームの立ち上げ
  • 2016年 : デジタル通貨研究所の設立
  • 2017年 : 商業銀行との共同開発・テストに着手
  • 2020年 : 一部地域でパイロットテストを実施
  • 2022年 : アプリをリリース、北京オリンピックでお披露目

2014年とかなり早い段階でCBDCの開発をスタートさせていることがわかります。

また、中国人民銀行の発表によると、デジタル人民元の利用状況は2021年12月末時点で2億6,000万件の個人口座が開設され、取引金額は2022年8月までに1,000億元(約2兆700億円)に達したと伝えられています。

ヨーロッパ

EUとしてデジタルユーロを開発する方向性で動いています。

  • 2020年10月:デジタル・ユーロのレポートを発表
  • 2021年10月:デジタル・ユーロのプロジェクトをスタート
    • 2年間は調査フェーズ
    • 3年間は開発フェーズ
  • 2026年:リリース予定

日本やアメリカと着手し始めた時期は変わりませんが、具体的なスケジュールに落とし込まれて開発が進んでいる点が異なります。

その他の国

上記以外の国家でもCBDCの取り組みは進んでいますが、その中でも特徴的な国をいくつかご紹介します。

バハマ

  • 2020年10月に世界初となるCBDCを発行した国。
  • 法定通貨は「バハマ・ドル」、CBDCは「サンド・ドル」と呼ばれる。
  • 700以上の小島から成っており、現金を運ぶ際のコストがかかってしまう課題を解決するためにCBDCをいち早く採用した。
  • 利用している国民からの評判はよいが、まだ一般的な普及には至っていない。

スウェーデン

  • CBDC「e-クローナ」の発行を行い、実証実験を推進している。
  • スウェーデンでは既にキャッシュレス決済が普及しており、CBDCに対する国民の反応や浸透は問題なく行われている。
  • 今後5年以内にはCBDCの正式なリリースがされる予定。

○カンボジア

  • 2020年10月から決済システムである「バコン」の運用を開始している。
  • 銀行口座の保有率が低く、スマートフォンが多く普及しているため、自国通貨ではなく米国ドルが流通する経済のドル化が進んでいることが国家の課題として挙げられる。
  • この経済のドル化を解決するために、自国通貨「バコン」の普及に励んでいる。

CBDCの社会実装は現実的か?

ここまで、CBDCの定義と各国の推進状況を見てきました。ここからはそれらを踏まえた上で、CBDCの課題と今後について考察してみます。

まずCBDCには多くの課題が挙げられています。

  • 既存の民間企業(主に銀行等の金融機関)との業務の棲み分け
  • 災害など電気が供給されない場合など、有事における対応
  • ITリテラシーがあまり高くない国民へ向けた普及戦略
  • 金銭のやり取りの全てを国家が閲覧できる状況への賛否
  • 大規模なシステムの開発、運用コスト

国家として運営する上で、安心・安全なサービスであることはもちろん、全ての国民・企業に対しての説明責任を果たせないと積極的に推進させることが難しい事がわかります。

その事から、CBDCの推進は技術的な実現性や革新性の理解が難しいのではなく、既存の枠組みの中では推進が困難である点にあると考えられます。一方で、中国が世界で最もCBDC普及のスピードが早いのは、国家が主導して政策を推し進める力があるからだと考えられます。

以上を踏まえた上で、例えば日本が発表している方針の中では「日本銀行が直接個人へCBDCを発行するのではなく、既存の現金と同様に間に仲介期間(銀行等)を挟むことで、一般層への普及や既存の民間企業との業務の棲み分けを検討している」という旨の記載があります。

「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会 中間整理」より引用

また、「あくまでCBDCは一つの決済手段であり、他の決済手段も並行して存在する」可能性にも言及されていました。

「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会 中間整理」より引用

日本も現在は検討段階であり、あくまで可能性の話ですが、やはり既存の現金に取って代わるほどのCBDCの普及は難しいと言わざるを得ません。新型コロナウイルスのような社会情勢を一気に変える”何かの存在”、もしくは国家が反対を承知の上で本気で力を入れない限り、少なくとも数年単位での実現は困難であると思われます。

また、既存で存在する企業を加味した上でCBDCをリリースした場合、国際送金の簡易性や送料の安さ等、CBDCならではの革新性が無くなってしまう可能性も大いに考えられます。

事実、日本の実証実験では分散型台帳技術を利用(想定)しておらず、全て中央管理での実証実験がされていました。

CBDC自体は今後期待されている技術や概念ですが、今後各国のCBDC推進状況を確認していく際には、具体的な技術の中身やステークホルダーにも注意していく事が必要だと感じました。

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参考文献

本記事に使用した文献は以下になります。

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この記事の監修者

mitsuiのアバター mitsui web3リサーチャー

web3リサーチャー / 国内外問わずweb3に関する情報(プロジェクト・ニュース・単語の解説、プロジェクトオーナーへのインタビュー記事、リサーチからの学びや考察記事)を発信。

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