【Week : 6/16-6/20】医療系やWeb3プラットフォームなどが資金を集める スタートアップ資金調達リサーチ

6月も後半に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、6月16日から6月20日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。 さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
手術に特化した医療機関の拡大を推進するSDPジャパン、約45億円の資金調達を実施
事業内容: 単科特化型(整形外科および循環器内科領域)の手術専門医療機関の全国展開支援
調達金額: 約45億円
引受先: JPインベストメント、T&D Innovation Fund、三井住友信託銀行、ジャパン・コインベスト4号投資事業有限責任組合/三井住友トラスト・インベストメント、戸田建設、Eight Roads Ventures Japan、グロービス・キャピタル・パートナーズ
今後の展望: 地方都市への展開拡大、次世代型医療モデルの全国展開支援、採用強化による事業加速
SDPジャパンは、「高度な手術で世界を感動と喜びで満たす」をミッションに掲げ、手術特化型医療機関のプロデュースを行うスタートアップです。集患マーケティング代行、手術部材供給、不動産および高度医療機器の調達、バックオフィス業務代行など、手術医療に特化した包括的なソリューションを提供しています。2014年の創業以来、首都圏を中心に7つの医療機関をプロデュースし、累計約14,000件の手術を支援、現在では年間3,000件超の手術支援を実現してきました。
日本の超高齢社会において、整形外科や循環器分野の手術件数は年平均5〜8%のペースで増加しており、2050年頃まで需要拡大が見込まれています。SDPジャパンは、医師が十分な手術環境を得にくいという構造的課題と、患者にとって信頼できる医師との出会いが偶然性に左右される情報格差の解消に取り組むことで、医療提供の在り方そのものの変革に挑戦します。

デジタル証券のマーケットプレイスを運営するデジタル証券、5億円の資金調達を実施
事業内容: 個人投資家向け不動産STOファンドの販売、デジタル証券のマーケットプレイス創出
調達金額: 5億円
引受先: 常陽銀行が出資するJレイズ投資事業有限責任組合、丸紅、オリエントコーポレーション、サンケイビル、名古屋銀行が出資するめいぎん地域活性化1号投資事業有限責任組合
今後の展望: 国内初の「デジタル証券のマーケットプレイス」創出、「貯蓄から投資へ」の健全な推進
デジタル証券は、”幸せを、積み上げる。”というミッションのもと、個人投資家向けの不動産STOファンドの販売を手がける金融商品取引業者です。同社は「renga」という資産運用サービスを通じて、従来機関投資家向けだった不動産投資を個人投資家にも開放し、デジタル証券という新たな金融商品による資産運用の民主化を推進しています。
デジタル証券の強みは、デジタル証券のマーケットプレイスという新たな金融インフラの構築ノウハウにあります。”デジタル証券のマーケットプレイスで、資産運用を当たり前に。”というビジョンのもと、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」の流れを健全に推し進め、個人投資家にとってより身近で透明性の高い投資環境の実現を目指す方針です。

ブロックチェーンとマイナンバーカードを組み合わせたサービスを展開するマイナウォレット、2億円の資金調達を実施
事業内容: マイナンバーカードを活用したデジタルウォレット「マイナウォレット」、タッチ決済サービス「マイナペイ」の開発
調達金額: 2億円
引受先: gmjp holdings、Coincheck Group N.V.
今後の展望: ステーブルコインや暗号資産の普及に向けたweb3サービスの本格展開、プロダクトチームの体制強化
マイナウォレットは、約1億人に普及しているマイナンバーカードを、ブロックチェーン技術と組み合わせることで、誰もが簡単にお金やトークンのやりとりを行える社会の実現を目指すスタートアップです。同社が開発する「マイナウォレット」は、日本が世界に誇るデジタル基盤であるマイナンバーカードを活用したデジタルウォレットであり、「マイナペイ」はマイナンバーカードでのタッチ決済を可能にするサービスです。
Web3が主流となり現実世界と結びついていく中で、子どもからお年寄りまで、すべての人が安心・安全・簡単にweb3サービスを利用できる環境の構築が重視されています。マイナウォレットは、国のデジタルIDインフラとWeb3技術を融合させることで、次世代のデジタル社会を支える中核的な技術として、価値の流通総量を増加させることを目指しています。

クエストリー、プレシリーズA前半の資金調達を実施
事業内容: コンテンツ事業の企画・運営、コンテンツファイナンスの設計、デジタル証券基盤による投資家層の拡大
調達金額: 2.6億円
引受先: Brand New Retail Initiative Fund、Blizzard the Avalanche Fund、TIS
今後の展望: コンテンツ事業の強化、第一種金融商品取引業の取得を含めたデジタル金融事業の基盤整備
クエストリーは、「日本のコンテンツを金融の力で世界一に」をスローガンに掲げ、エンタメに特化した直接金融の仕組みを構築するスタートアップです。クエストリーは、日本のコンテンツ産業における資金調達の課題を解決するためには、金融機関を介さずに、投資家から直接調達できる「直接金融」の仕組みが必要だと考えています。その実現のために、各分野の第一線で活躍するプロデューサーやクリエイターとの強固な連携を通じて、コンテンツ事業の企画段階から深く関与することで、グローバルのファンと投資家双方にとって魅力的なコンテンツを創出することを目指します。
また、ブロックチェーン技術を活用したシステムの導入により、これまでアクセスが難しかった海外の多様な投資家層から、透明かつ効率的に資金を調達できる環境の整備を進行中です。特にAvalancheブロックチェーンの活用を検討しており、大規模で効率的なクロスボーダー投資を実現するプラットフォームを構築しています。日本発コンテンツの国際競争力を一層強化し、文化的資産と金融イノベーションの融合という新たなビジネスモデルの確立が目標です。

子育ての金融インフラを提供するMEME、資金調達を実施。累計調達金額は2億8,000万円
事業内容: 家庭と教育現場をつなぐ決済サービス「スクペイ」、親子のお金の管理アプリ「manimo」の提供
調達金額: セカンドクローズ実施(金額非公開)
引受先: 理想科学工業、小西祐介氏
今後の展望: 「スクペイ」の全国展開、学校集金にとどまらない子育ての金融インフラとなる事業展開
MEMEは、「新しい価値を創造し、人々の豊かな未来に向き合い続ける」というミッションのもと、親子のお金の管理アプリ「manimo」からサービスを始め、現在は学校向け集金決済サービス「スクペイ」を主力事業として展開しています。「スクペイ」は2024年4月の正式リリースから1年で約400校に導入され、約11万人の保護者に利用されており、教材費・遠足費・給食費などの学校関連費用の支払いをデジタル化しています。
「スクペイ」の特徴は、教職員の集金業務負担を大幅に軽減しながら、保護者の利便性も向上させる点にあります。銀行口座を設定すれば即時決済が可能で、382行との接続を実現。また、個人情報管理の観点でも安全性を確保し、学校側で保護者の口座情報や個人情報を入力・表示することなく運用できる設計です。今後は大規模自治体での導入も予定されており、中長期的には学校集金を超えて、保護者が日常的に子育てに関連する支払いや決済を行うさまざまなシーンでの利用拡大を目指します。

まとめ
6月16日から6月20日のスタートアップ資金調達例をまとめました。
今週の資金調達ニュースから、特筆すべきトレンドとして「社会インフラのデジタル化」と「金融イノベーション」の融合が挙げられます。SDPジャパンは医療インフラの革新、MEMEは教育現場のデジタル化、マイナウォレットは国のデジタルIDインフラとWeb3の融合など、各社とも既存の社会システムをテクノロジーで変革しようとしています。また、デジタル証券やクエストリーのようにブロックチェーン技術を活用した新たな金融商品・サービスの創出も進んでおり、従来アクセスが限定的だった投資機会の民主化が加速しています。
注目すべきは、各社とも単なる技術革新にとどまらず、明確な社会課題の解決を目指している点です。超高齢社会における医療需要の増大、教職員の業務負担軽減、コンテンツ産業の資金調達課題、そして「貯蓄から投資へ」という国策への貢献など、それぞれが日本社会が直面する構造的課題に正面から取り組んでいます。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。