2026年10月1日、茨城県取手市は庁舎内2カ所にAI音声認識と感情解析を活用したカスタマーハラスメント対策システムを導入し、本格運用を開始した。自治体としては初の取り組みであり、職員の心理的安全性確保を目指す。
取手市が自治体初のAIカスハラ対策システムを本格運用へ
取手市役所は、相談窓口や面談室における職員の安全確保を目的として、AI技術を駆使した最新の防犯・業務支援システムを本格導入した。
この取り組みは株式会社アドバンスト・メディアとの技術連携協定に基づくものであり、令和7年度に実施された約3か月間のテスト運用を経て実用化に至った。
背景には、令和7年6月に公布された改正労働施策総合推進法(※)により、地方公共団体の任命権者にカスハラ対策が義務付けられた事実が存在する。
本システムは、対面でのやりとりをAI音声認識によって自動でリアルタイムにテキスト化し、可視化する仕組みを備えている。
会話データは行政専用のLGWAN(※)を通じて室外のパソコンに共有されるため、閉塞感のある個室内でのトラブル発生時も即座に対応可能だ。
不適切な発言や感情の高ぶりをAIが検知すると自動でアラートが通知され、室外の管理職が迅速にフォローに入れる体制が整えられている。
さらに、蓄積された対応履歴は検索可能であり、不当な要求に対する客観的な証跡として活用される見通しである。
過去の傾向を分析することでカスハラを誘発する言動パターンを可視化し、組織的な対策に役立てる狙いも含まれる。
※改正労働施策総合推進法:企業や自治体に対してパワーハラスメント防止等の措置を義務付ける法律。法改正によりカスハラ対策義務も明記された。
※LGWAN:総合行政ネットワークの略称。地方公共団体相互を接続する高度なセキュリティを確保した行政専用の閉域ネットワーク。
心理的負担軽減と対応品質向上 データ活用が生む防犯効果
本システムの本格運用により、閉鎖的な空間で一人で市民対応に当たる職員の心理的プレッシャーは大幅に軽減されると期待される。
特に異動直後の職員や経験の浅い担当者であっても、室外からの支援や画面上への関連資料の自動表示機能によって、適切な回答を提供しやすくなる。
不当な暴言や過剰なクレームに対する強い抑止力として機能するだけでなく、相談対応全体の品質向上にも寄与する可能性が高い。
一方で、AIによる自動検知や感情解析の精度向上には継続的なデータ蓄積と運用ノウハウのアップデートが不可欠となる。
過度な監視体制が相談者との信頼関係に影響を与える懸念も排除できないため、適切な運用方針の維持が求められるだろう。
今後は厚労省のマニュアルに基づくキーワードの拡充や独自ルールの追加により、さらに精度の高いリスク管理が期待されている。
自治体における顧客対応の新しい標準モデルとして、同様の課題を抱える他自治体へ波及していくか注目される。