2026年9月28日、日本の電通総研はAIエージェントを搭載した安全保障貿易管理ソリューション「GREENLIGHT」の第1弾を発表した。外為法に基づくリスト規制判定などの効率化を目指し、同年11月2日より国内企業向けに提供を始める。
複雑な貿易管理業務を集約 AI活用で判定時間を97%短縮
地政学リスクの高まりを受け、半導体やAI、ソフトウェアといった軍事転用の恐れがある機微技術の輸出管理(※)は世界的に厳格化している。日本企業も外為法や米国輸出管理規則など多様な法令へ対応しなければならず、業務負荷の増大が課題となっていた。特に「該非判定」と呼ばれる規制対象の判別作業は高度な専門知識を要するため、担当者の属人化と対応の遅れを引き起こしやすい。
電通総研が開発したシステムは、関係法令や通達を集約し、ユーザーからの質問に対してAIエージェントが根拠法令とともに即座に回答を提供する仕組みである。さらに輸出予定の貨物や技術情報をアップロードすれば、AIがリスト規制要件と照合して仮判定案を提示する。判定結果や承認履歴を一元管理する機能も備えており、社内審査や後日の監査対応までスムーズに運用できるよう設計された。
実際に行われた国内企業との実証実験では、判定依頼の受領から仮判定提示までに従来3営業日を要していた工程が約30分へ大幅に短縮された。最も効果が高かったケースで作業時間を最大97%削減できたという実績は、現場の業務プロセスを大きく変革する要因になり得る。専門知識を持たない担当者でも迅速かつ正確な手続きが可能となる点は、深刻な人手不足に直面する企業にとって強力な支援策となる。
※安全保障貿易管理:武器や軍事転用可能な貨物・技術が国際社会の安全を脅かす懸念活動者へ渡ることを防ぐため、国際的な枠組みに基づき協調して行う輸出等の管理枠組み。
経済安保対応の基盤へ拡大 法改正リスクへの適応が鍵に
新システムの導入は単なる作業の効率化にとどまらず、日本企業における企業の経営基盤を強固にする効果が期待される。継続的に見直される国内外の貿易規制へ迅速に適応できなければ、市場参入の遅れや意図せぬ法令違反リスクを抱え込むことになりかねない。一元化された判定データの蓄積は、過去の判断根拠を可視化し、法改正時における見直し作業のハードルを低減させる重要な役割を果たす。
一方で、AIが提示する判定結果はあくまで予測や補助的な案であるため、最終的な判定責任は人間が負わなければならない。システム依存による誤判断を防ぐためにも、社内における最終確認フローや監査体制の整備が引き続き不可欠だ。判定プロセスのブラックボックス化を避け、適切な人間の関与を確保することが運用の安定化につながる。
電通総研は今後「GREENLIGHT」シリーズの機能を順次拡張し、判定以外の貿易管理業務全般へと支援領域を段階的に広げていく方針である。世界的な規制の複雑化が進む中で、テクノロジーを駆使した安全保障対応の強化は、日本の製造業やIT企業がグローバル競争力を維持するための不可欠な要素となっていくだろう。