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プロジェクトリサーチ 14分で読める

商品探しから店舗運営まで支えるClaudeの「コマースエージェント」

PlusWeb3 編集部
PlusWeb3 編集部 Web3・AI専門メディア

Anthropicは2026年9月2日、Claudeを使ってオンライン上の買い物や店舗運営を支える「コマースエージェント」の開発用ひな型を公開しました。買い物客向けのAIは、自然な会話から商品を探し、比較やカート作成、購入後の問い合わせまでを支援します。一方、店舗向けのAIは、売上や在庫を確認しながら、価格や販売促進の案を出す役割を担います。

Anthropicは、Claude上でショッピングエージェントを運用する小売企業では、カートの規模が最大35%大きく、買い物客が購入を完了する可能性が60%高い例が見られたとしています。AIが商品検索だけではなく、買い物と店舗運営の両方を支える存在へ広がり始めているため、本プロジェクトの詳細を考察します。

Claudeでコマースエージェントを作りやすくする新しい仕組み

Anthropicが公開したのは、Claudeを使ったコマースエージェントを企業が開発するための「ブループリント」と呼ばれるひな型です。対象は一般的な小売だけではなく、旅行、通信、チケット販売などにも広がっています。

大きな特徴は、企業が最初からすべての仕組みを作る必要がないことです。買い物客を支えるショッピングエージェントと、店舗運営を支えるマーチャントエージェントの動く見本が用意されており、それを自社の商品情報やルール、ブランドに合わせて調整できます。コードを書く前に動きを確認できるデモも用意されています。

利用できる環境も一つではありません。Claude APIのほか、Amazon Bedrock、Microsoft Foundry、Google Cloud Vertex AIなど、企業がすでに使っている環境でも利用できます。さらにClaude Codeを使って開発を始めるためのプラグインも公開されています。

つまり今回の取り組みは、新しいAIサービスをそのまま企業へ提供するというより、各社が自社に合った買い物支援AIを作るための土台を用意するものです。AIエージェントの導入に必要な準備を減らし、実際のサービスにつなげやすくすることが狙いだと考えられます。

参照:Anthropic「Building commerce agents with Claude」

会話から購入までを一つにつなぐショッピングエージェント

引用:Anthropic「Building commerce agents with Claude」

Claudeを使ったショッピングエージェントは、商品名を入力して検索結果を返すだけのAIではありません。「何をしたいのか」「誰が使うのか」「どのような条件があるのか」といった希望を会話から整理し、その内容に合う商品探しを支援します。従来は商品検索、比較、カート、問い合わせなどが別々の画面に分かれていましたが、それらを一つの会話の中で進められることが特徴です。

商品名が分からなくても目的から探せる

一般的なECサイトでは、「テント」「寝袋」「キャンプ用品」のように、利用者がある程度商品名や種類を知ったうえで検索する必要があります。Claudeを使ったショッピングエージェントでは、「子ども2人と週末にキャンプへ行くために必要なものをそろえたい」といった希望を、そのまま文章で伝えられます。

AIはその希望に合わせて商品カタログを確認し、テントや寝袋、調理器具など、複数の商品を組み合わせて候補を出せます。そのため、利用者が必要な商品を一つずつ考えて検索する手間を減らせる可能性があります。

特に、新生活の準備や旅行、アウトドア、家電の買い替えなど、複数の商品をまとめて探す場面では使いやすい仕組みです。「何を買えばよいか分からない」という段階から相談できるため、商品知識が少ない人でも買い物を進めやすくなると考えられます。

商品の比較からカート作成まで会話の中で進められる

商品候補が見つかった後も、ショッピングエージェントは買い物を支援します。Anthropicが公開した仕組みでは、商品を文章だけで紹介するのではなく、商品一覧や比較結果、カートなどを会話画面の中に表示できるようになっています。

利用者は候補を見ながら、「もう少し安いものがよい」「別のブランドも見たい」「この2つを比較したい」と伝えられます。さらに、利用者の好みを記録し、その情報を次の提案に生かす仕組みも用意されています。毎回同じ希望を最初から説明する負担を減らせる可能性があります。

購入する商品が決まれば、AIがカートを準備し、企業が用意している購入手続きへ引き継ぎます。AIが決済まで自由に行うのではなく、商品選びから購入直前までを会話で支える形になっています。

購入後の問い合わせにも同じ会話で対応できる

オンラインショッピングでは、商品を買った後にもさまざまな確認が必要になります。「注文した商品はいつ届くのか」「返品するにはどうすればよいのか」「交換できるのか」といった問い合わせは珍しくありません。

ショッピングエージェントは、こうした購入後の質問にも同じ会話の中で対応できるように設計されています。注文履歴や企業が定めた返品・返金のルールなどとつなぐことで、利用者が別のサポートページを探さなくても必要な情報を確認できます。

これまでのECサイトでは、商品を買う画面と、購入後に相談する窓口が分かれているケースが一般的でした。コマースエージェントでは、商品探しから購入後の相談までを一つの会話につなげられます。商品を売るためだけではなく、購入後まで長く利用者を支える役割を持てる点が大きな特徴です。

店舗を運営する人の判断も支えるマーチャントエージェント

Claudeのコマース向けブループリントには、買い物客向けの仕組みだけではなく、店舗を運営する人を支える「マーチャントエージェント」も用意されています。売上や在庫などの情報を確認しながら、店舗の状況を分かりやすく整理し、次に何をするべきかを考える手助けをします。数字を表示するだけではなく、質問に答えたり、対応案を出したりできることが特徴です。

売上の状況を会話しながら確認できる

店舗を運営する担当者は、日々多くの数字を確認しています。どの商品が売れているのか、逆に動きが鈍い商品は何か、売上に変化が起きていないかなど、確認する項目は少なくありません。

マーチャントエージェントでは、「最近よく売れている商品は何か」「売れ行きが落ちている商品はあるか」といった質問を文章で入力し、自社のデータをもとに回答を得られます。

Anthropicが公開している仕組みでは、売上分析に加えて、グラフや一覧などを画面に表示することも想定されています。そのため、担当者が複数の管理画面を行き来して数字を確認するのではなく、知りたいことをAIへ聞きながら状況を整理できる可能性があります。

AIが経営判断そのものを行うわけではありませんが、必要な情報を見つける時間を短くし、担当者が判断しやすい状態を作る役割が期待できます。

在庫を確認しながら値下げや販売方法を考えられる

商品の在庫は、多すぎても少なすぎても店舗にとって問題になります。売れる商品が不足すれば販売の機会を逃します。一方で、売れ残った商品が増えれば、保管する場所や費用も必要になります。

マーチャントエージェントは在庫の状況を確認し、問題が起きそうな場合に知らせることができます。Anthropicは、販売キャンペーンが始まる前に商品が売り切れそうな場合、それを事前に知らせる例を紹介しています。

反対に、前のシーズンの商品が多く残っている場合には、どの商品を値下げするべきかを過去の販売データから考えることもできます。価格や販売促進についても、自社の売上履歴をもとに案を出せる設計になっています。

AIが勝手に価格を決めるのではなく、担当者が判断するための材料を増やす仕組みとして使える点が重要です。

販売促進の案を作りながら最終的な判断は人が行う

マーチャントエージェントは、売上や在庫を確認するだけではなく、その結果をもとに販売促進の案を作ることもできます。たとえば在庫を減らしたい商品がある場合、その商品を紹介するキャンペーンの案を作成するといった使い方ができます。

これにより、担当者は「状況を調べる」「対応方法を考える」「販売促進の案を作る」といった作業を一つの流れで進めやすくなります。

一方で、AIが出した案が自動的に店舗へ反映されるわけではありません。Anthropicが公開した基本設定では、AIが変更案を準備した後、人が内容を確認して承認してから反映する仕組みになっています。

AIにすべてを任せるのではなく、情報整理や案づくりをAIが担当し、最終的な判断を人が行います。この役割分担によって、店舗側が主導権を持ったまま、日々の運営業務を効率化できる可能性があります。

買い物にAIを使うからこそ大切になる安全への考え方

コマースエージェントが実際の買い物や店舗運営に関わるようになるほど、便利さだけではなく、間違った商品や価格を案内しないことが重要になります。Anthropicの仕組みでは、AIが商品名や価格を自由に作るのではなく、企業が持っている実際の商品データを使うように制限されています。また、必要以上に高い商品を強くすすめるような売り方も避ける設計になっています。

お金が関わる操作についても、AIだけで決めない仕組みが用意されています。買い物客向けではAIがカートを準備しても、購入を確定する操作は別に行います。店舗向けでも、価格変更や販売キャンペーンなどをAIが提案できますが、基本設定では人が承認してから反映します。

さらに、購入できる商品の数や値引き幅などにも上限を設定できます。商品レビューや出品者からの文章など、外部から入ってくる情報についても、その内容によってAIが不適切な操作をしないよう処理する仕組みが用意されています。

買い物では、小さな間違いでも金銭や企業への信頼に影響する場合があります。そのため、Claudeに何でも自由に任せるのではなく、人や企業のシステムが確認できる範囲でAIを働かせることが、実際のサービスで利用するうえで重要になると考えられます。

今後の展望

Claudeを使ったコマースエージェントが広がれば、変わるのは商品検索の方法だけではないと考えられます。会話そのものが新しい買い物の入り口となり、店舗側でもAIを使って状況を確認する機会が増える可能性があります。ここでは、今回の取り組みから考えられる今後の変化を3つの視点から考察します。

ECサイトは「商品を探す場所」から「相談しながら買う場所」へ変わる可能性がある

今後、ECサイトの作り方そのものが変わっていく可能性があります。現在のオンラインショッピングでは、利用者がカテゴリーを選び、キーワードを入力し、検索結果から商品ページを一つずつ開いて比較する方法が一般的です。しかし、コマースエージェントが広がれば、最初に行うことが商品検索ではなく、AIへの相談になるかもしれません。

たとえば「4人家族で使える冷蔵庫が欲しい」「10万円以内で在宅勤務に必要なものをそろえたい」と伝えると、AIが条件を整理しながら候補を探します。利用者は商品について詳しくなくても、目的や予算を伝えるところから買い物を始められます。

Anthropicは、商品検索や比較、カート作成などを会話の中で進める仕組みを示しています。さらに、今後は同じ仕組みを音声で使うことも考えられるとしています。そのため、画面を見ながら商品を探すだけではなく、AIと話しながら買い物をする体験が増えていく可能性があります。

この流れが進めば、企業側も商品の並べ方だけではなく、「どのような相談に答えられるか」を考える必要が出てきます。家電であれば生活スタイルから商品を探し、旅行であれば日程や予算、希望する過ごし方から候補をまとめるといった形です。

実店舗では店員に相談して商品を選べますが、ECサイトでは利用者が自分で探す場面が中心でした。コマースエージェントが広がれば、オンラインでも「相談しながら選ぶ」という体験を作りやすくなります。将来は商品の多さだけではなく、どれだけ利用者の希望を理解して選びやすくできるかが、ECサービスの違いにつながる可能性があります。

「何を買ったか」だけではなく「何を求めているか」を知るきっかけになる

これまでECサイトでは、検索された言葉や閲覧された商品、実際に購入された商品などをもとに、利用者の興味を考える方法が広く使われてきました。一方、会話型の買い物では、それだけでは分からなかった「なぜ必要なのか」が会話の中に表れる可能性があります。

たとえば「子どもと初めてキャンプに行きたい」「一人暮らしを始めるので最低限必要な家電をそろえたい」といった相談には、単なる商品名だけではなく、その人が買い物をする目的も含まれています。Claudeのショッピングエージェントには、利用者が伝えた好みを記録し、その後の商品提案に生かす仕組みがあります。

ただし、Anthropicが今回公開したブループリントで、利用者との会話をそのまま商品開発や仕入れに利用する機能が示されているわけではありません。ここからは将来の活用方法についての考察になります。

今後、企業が利用者から適切な同意を得て、個人情報やプライバシーを守る仕組みを整えた場合には、会話から見えてくる希望をサービス改善に生かせる可能性があります。たとえば「条件に合う商品が見つからない相談が多い」「特定の商品を一緒に買いたいという希望が多い」といった傾向が分かれば、品ぞろえを見直すヒントになるかもしれません。

従来は「売れた商品」が重要な情報でしたが、AIとの会話が増えれば「欲しかったが見つからなかった商品」も見えやすくなる可能性があります。適切な情報管理を前提としながら、利用者の声を商品やサービスの改善へつなぐ仕組みが作られれば、コマースエージェントは販売を助けるだけではなく、企業が顧客の希望を知る新しい接点になると考えられます。

小売だけではなく「会話しながら選んで契約する」サービスへ広がる可能性がある

Claudeのコマース向けブループリントで注目されるのは、対象が一般的なネット通販だけではないことです。Anthropicは、小売に加えて旅行、通信、チケットやエンターテインメントなどを想定した動く見本を用意しています。

これらの分野には共通点があります。それは、利用者が多くの条件を比べて決めなければならないことです。

旅行であれば、日程、予算、行き先、ホテル、移動方法などを考える必要があります。通信サービスであれば、現在の契約内容やデータ使用量、料金を見ながらプランを選びます。チケットでも、日時、人数、座席、料金など複数の条件があります。

こうしたサービスでは、利用者が自分で条件を一つずつ設定するより、会話の中で希望を伝えながら整理する方が分かりやすい場合があります。そのため、コマースエージェントは「商品を買うAI」だけではなく、「複雑な選択を手伝うAI」として広がる可能性があります。

Anthropicの技術解説では、将来は同じエージェントを音声から利用したり、航空券などの価格が下がった場合に利用者へ働きかけたりする方向も示されています。さらに先には、利用者本人ではなく、利用者から任された別のAIエージェントが店舗を訪れ、商品やサービスを探す未来にも触れています。

もしこの形が広がれば、人が一つずつWebサイトを開いて条件を比較する買い方から、希望をAIへ伝え、必要な情報をまとめて確認する買い方へ変わる可能性があります。企業側にとっても、人だけではなく「利用者の代理として動くAI」に商品情報を正しく伝えることが必要になるかもしれません。

コマースエージェントの広がりは、ECサイトに便利なチャット機能を追加するだけの変化ではなく、オンライン上で商品やサービスを探し、比較し、選ぶ方法そのものを変える動きにつながる可能性があります。

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