2026年8月1日、国内のNECは、人とAIの共創を実践する社内組織「コーポレートAI・Workforce部門」を新設した。部門長から社員までの役割をAIが担い、人が最終的な意思決定や品質・ガバナンスを統制する国内大手企業初の取り組みである。
NEC、AIが4階層の組織運営を自律化
コーポレートAI・Workforce部門は、AI部門長、AIボード、AIマネージャー、AI社員の4階層で構成される。AIが職務定義から業務実行、自己進化までを担い、人はその活動を評価・統制する仕組みだ。
AI社員は社内ニーズに応じてAIマネージャーが生成し、NECのパーパスや行動規範、社内規定などを業務上の判断基準として組み込んだうえで稼働する。不足するスキルを自ら学習し、継続的にアップデートする点も特徴となる。
さらに、AIボードとAIマネージャーは、AIエージェントの生成や稼働、改善を一元管理する。個別部門がAIを分散的に構築・運用するのではなく、業務を本部門へ集約することで、透明性や品質を確保しながら統制されたAI活用を目指す。
7月から1カ月間実施した社内実証では、役員会議向けの経営分析やシミュレーション、リスク予兆検知をAIが一貫して遂行し、関連業務の時間を約7分の1に短縮した。AIの活動状況はデジタルツイン(※)上の「AI統合マネジメントコックピット」でリアルタイムに可視化される。
※デジタルツイン:現実の組織や業務などをデジタル空間上に再現し、状態の把握や分析に活用する仕組み。
AIを「増力」と捉える経営モデル、社外展開へ
NECが目指すのは、AIによる単純な人員代替ではない。グループ約10万人の従業員を抱える自社を「クライアントゼロ」と位置づけ、AI資本と人的資本を最適配分し、人がより高度で創造的な業務へ集中できる企業運営モデルを検証する考えである。
週次のサーベイではAI社員から課題や改善案を収集し、AI組織だけで解決できる問題は自律的に改善する。一方、データや権限、ナレッジなど人の対応が必要な課題はリクエストとして提示する。この構造によって、人の役割はAIを直接動かすことから、AIが働きやすい環境の整備や重要な意思決定へ移る可能性がある。
もっとも、AIが組織階層の一部を担うほど、判断の妥当性や品質、ガバナンスをどう維持するかが重要になる。NECは人による最終評価を残しながら、今回の実証で得た仕組みや方法論、基盤、運用ノウハウを「BluStellar(※)」のもとで企業・組織へ提供する方針だ。
AIを既存業務へ部分的に導入する段階から、AIを前提とした企業OSや経営モデルへ移行できるか。今回の取り組みは、AIネイティブ時代における「人とAIの役割分担」を企業経営そのものから再設計する試金石になると言える。
※BluStellar:NECが展開する価値創造モデル。AIなどのデジタル技術を活用し、企業・組織の変革を支援する。