2026年7月31日、米データ・AI企業のSASは、マーケティング担当者向け新ソリューション「SAS 360 Marketing AI」を発表した。データサイエンスチームに依存せず機械学習モデルの構築・運用を可能にし、マーケティング施策の実行速度向上やROIの改善、顧客体験の向上を支援するとしている。
SAS、機械学習の現場活用を支援
SAS 360 Marketing AIは、マーケティング担当者が専門的なデータサイエンスの知識を持たなくても、機械学習モデルの構築から展開、運用までを進められるよう設計されたソリューションである。一般的なマーケティング業務向けのガイド付きワークフローやカスタマイズ可能なテンプレートを備え、データ分析から意思決定までの時間短縮を目指す。
機能面では、データ準備や品質評価、特徴量生成、モデル学習を自動化するほか、カスタマージャーニー上で予測スコアを活用できる。また、モデルの性能監視や再学習も自動で行い、運用負荷の軽減を図る。コンバージョンの高い顧客の特定や解約予測、クロスセル、顧客生涯価値(※)の分析など、幅広いマーケティング用途に対応する。
さらに、データを移動させずに学習を実施できる仕組みや、入力データ・分析結果の可視化、バイアス検知、ガバナンス機能も備え、信頼性の高いAI運用を支援する。製品は単体で導入できるほか、「SAS Customer Intelligence 360」と連携し、パーソナライゼーションや意思決定機能を強化することも可能だ。
IDCのリサーチディレクター、ロジャー・ベハリー・ラル氏は、これまで予測AIの導入には高いコストや専門知識が必要だったと指摘。その上で、SAS 360 Marketing AIはより多くのマーケティング担当者が予測AIを活用できる環境を提供し、AIの民主化を後押しすると評価している。
※顧客生涯価値(CLTV):一人の顧客が取引期間全体を通じて企業にもたらす利益の総額を示す指標。顧客維持やマーケティング戦略の評価に用いられる。
AI活用拡大で変わるマーケティング
今回の発表は、機械学習を一部の専門人材だけが扱う技術から、マーケティング現場で日常的に利用するツールへと広げる流れを後押しするものと言える。データ準備やモデル運用の負担が軽減されれば、施策立案から実行までのスピードが向上し、市場変化への迅速な対応も期待できる。
一方で、AIによる予測結果だけに依存した意思決定には注意も必要である。顧客理解やブランド戦略といった定性的な判断は引き続き人が担う場面も多く、AIは意思決定を支援する存在として活用することが重要になると考えられる。また、AIの利用拡大に伴い、データ品質やガバナンスを維持する体制づくりも重要な課題となる可能性がある。
今後は、専門部署だけでなく事業部門が自らAIを活用する環境が広がる可能性がある。マーケティング部門がデータ分析から施策実行までを主体的に担えるようになれば、企業全体の意思決定のスピードや競争力にも影響を与えることになりそうだ。
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