2026年9月14日、医療AIのアイリス株式会社は、同社が提供する医師向けエビデンス検索ツール「Evidence Finder」において、Sakana AI株式会社の日本語特化型LLMを採用することで合意したと発表した。
Sakana AIのモデル導入で国家試験正解率96.4%を記録
アイリスは自社開発の技術と、Sakana AIが開発したアルゴリズムを組み合わせた新たなモデルの構築を進めている。今回の合意により、医療領域における生成AIの活用事例として両社による取り組みが始動した。
具体的には、Sakana AIの日本語特化モデル「Sakana Namazu」を活用した評価を実施。2026年2月に挙行された第120回医師国家試験を解かせたところ、482点/500点満点という高得点を叩き出し、正解率96.4%を達成した。回答完遂率も100%を記録している。
同社が公開情報を元に確認した範囲では、経済産業省の「GENIAC」事業が指定する国産基盤モデルを用いた評価として最高得点になるという。実証実験ではモデル本来の性能を評価するために製品版の制約(画像の拒否等)を一部解除しており、モデル本来のポテンシャルの高さが提示された格好だ。
Evidence Finderは引用文献の透明性とハルシネーション抑制を重視して設計されている。検索結果には引用文献が明示され、実用性を高める工夫が凝らされた。標準搭載の「Verify機能」により医師が一次文献へ速やかに到達できる導線を整備し、臨床現場での意思決定を強力にサポートする。
国産ソブリンAIの臨床実装へ 日本の医療DX加速に期待
本取り組みは単なる精度向上にとどまらず、行政主導のデジタル改革とも連動している点に大きな意味がある。政府が公表した「骨太方針2026」においても、国産AI(ソブリンAI)の有効活用は本邦の医療行政やDXを推進する重要な施策として位置付けられた。
独自データを取り扱う医療分野において、セキュリティや規制へ配慮した国産LLMの需要は急速に高まりつつある。医療技術と厳格な法規制が交差する領域において、アイリスが主導する先進的な取り組みは、今後のソブリンAI活用におけるモデルケースとなり得る。
今回の連携強化により、臨床現場での業務効率化や意思決定の迅速化といったメリットが期待される。医師が最新のエビデンスへ即座にアクセスできる環境が整えば、診断や治療の精度向上を通じて患者へのメリットも膨らむ可能性がある。
もっとも、実際の現場で普及させるには医療機器としての該当性整理やさらなる安全性の検証など、超えるべきハードルも残されている。AIが出力した情報の妥当性を医師が最終判断する運用体制をどう確立するかについても、慎重な議論が求められると言えよう。未来の保健医療を豊かにすべく、技術開発と社会実装の両輪による進化が望まれる。
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