NHKは、視聴者や取引先などによるカスタマーハラスメントへの対応方針を策定した。
社会通念を超える要求や誹謗中傷から職員らを守り、犯罪に該当し得る事案や極めて悪質なケースには、捜査機関への通報や法的措置を講じる。
NHKが9類型の迷惑行為を明示
NHKは2026年8月1日、業務に関係する外部の者が、社会通念上許容される範囲を超えた言動や要求によって、職員らの就業環境を害する行為をカスタマーハラスメント(※)として対応する方針を示した。
対象には視聴者や受信契約者だけでなく、取材先、出演者、取引先、来場者、コールセンター利用者なども含まれる。
行為例として、放送や配信と無関係な性的要求やプライバシーに関わる要求、番組内容の変更や放送中止の要求、正当な理由のない受信料の減免・返金要求、不当な損害賠償請求を挙げた。
さらに、暴行や不必要な身体接触、暴言、脅迫、差別的言動、誹謗中傷、無断撮影・録音・配信、個人情報の公開なども対象になる。
大声や複数人による威圧、同じ質問の執拗な繰り返し、不退去や居座り、長時間の電話といった行為も明示した。
ただし、これらは例示であり、該当範囲を限定するものではない。
対応では、上司や業務管理者、相談窓口へ報告できる体制を整え、事実関係を迅速かつ正確に確認する。
被害が認められた場合は職員らの保護とケアを優先し、犯罪に該当し得る場合や極めて悪質な事案には、通報や必要な法的措置を含む厳正な対応を取る方針だ。
また、職員側が外部関係者にカスタマーハラスメントを行ったとの申出があった場合も調査し、行為が確認されれば規程に基づいて厳正に対処することも明記された。
職員への教育や啓発も継続し、被害者にも加害者にもなり得るとの認識を組織内に浸透させる方針だ。
※カスタマーハラスメント:顧客や取引先などの言動・要求のうち、内容や手段が社会通念上の許容範囲を超え、労働者の就業環境や人格、尊厳を害する行為を指す。
職員保護と意見対応の両立が課題
今回の方針策定には、職員や業務従事者の安全を確保しつつ、公共メディアとして視聴者の意見や要望に向き合う姿勢を維持する狙いがあると考えられる。
相談先や対応基準を明文化したことで、現場が個別判断に迷う場面を減らし、深刻な被害へ発展する前に組織として対応しやすくなる。
一方で、正当な批判や要望と、就業環境を害する迷惑行為との線引きは慎重さを要する。
放送内容や受信料を巡る意見は公共性が高く、強い不満を伴う場合もあるため、表現の厳しさだけで一律に排除すれば、視聴者との対話を狭める可能性がある。
そのため今後は、要求内容の妥当性、言動の継続性、威圧性、業務への支障などを総合的に判断し、対応記録を蓄積する運用が重要になるだろう。
判断基準を現場へ浸透させる教育と、被害者への心理的支援を継続できるかが実効性を左右すると言える。
さらに、職員側のハラスメントも処分対象とする姿勢を実効性あるものにできるかが問われる。
外部からの行為だけを問題視せず、双方の人格と尊厳を守る運用を徹底することが、方針への信頼性を高める鍵になりそうだ。
関連記事:
スクエニが誹謗中傷投稿者を特定し和解 法的対応の実効性示す
