日立製作所は暗号資産やステーブルコイン、NFTなどのデジタルアセット取引におけるアンチ・マネー・ロンダリング(AML)実証の結果を公表した。業界横断でのリスク情報連携や監視手法の実用性を確認し、10月からサービス提供を開始する予定だ。
日立、17社とデジタル資産AML実証
日立製作所は2026年7月30日、金融機関や暗号資産関連事業者など17社と共同で進めたデジタルアセット取引向けAML実証について、実務適用可能性を確認したと発表した。
本取り組みは、日本発の業界横断型AMLモデルの社会実装を目指すものであり、不正検知の早期化と精度向上を目的としている。
実証では、各事業者が保有する個人属性情報を広範囲に共有するのではなく、ウォレットアドレスや取引情報などのリスクシグナルを活用した情報連携の仕組みを検証した。
疑わしい取引の兆候や高リスクなウォレット情報を共有し、自社の顧客情報や取引履歴と照合することで、追加確認や初動対応につなげられるかを検証している。
また、ステーブルコインなど発行済みトークンの流通状況を継続的に監視し、高リスクアドレスとの関係や資金移動経路を把握する仕組みについても検証を行った。
さらに、制裁・犯罪関連リストやブロックチェーン分析、AI・機械学習による取引行動類似度分析などを組み合わせ、既知リストだけでは捉えにくいリスクも補完的に把握できることを確認した。
今回の実証は、2025年2月〜4月に実施した第1回から継続するデジタルアセット取引におけるAML高度化の取り組みの一環である。
2026年3月から5月に実施した第2回実証では、金融庁「FinTech実証実験ハブ」の支援案件として進められ、業界横断型AMLモデルの社会実装に向けた成果を得た形となる。
日立は実証結果を踏まえ、2026年10月からは「事後モニタリング」「オンライン即時評価」「トークンモニタリング」を提供するAMLモニタリングサービスを開始する予定であり、将来的には関係各社と「AML共同センター」の具体化も進める方針だ。
業界連携型AMLが広げる効果と課題
業界横断でリスク情報を共有できる仕組みが広がれば、単独の事業者では把握しにくい不正取引の兆候を早期に捉えやすくなるかもしれない。複数の主体が連携することで監視の網が広がり、金融犯罪対策の実効性向上につながる場面も考えられる。
また、AIやブロックチェーン分析を組み合わせた多層的なリスク評価が普及すれば、急速に変化するデジタルアセット市場に対応しやすい環境づくりにも寄与する可能性がある。
事業者ごとの調査負担や専門人材への依存を一定程度軽減できる余地もありそうだ。
一方で、業界全体で情報連携を進めるには、参加事業者の継続的な協力や運用ルールの整備が重要になるとみられる。市場や規制の変化に応じて分析手法を更新し続けなければ、十分な効果を維持することは容易ではないだろう。
今後、日立が構想する「AML共同センター」が具体化すれば、金融機関や暗号資産事業者、ステーブルコイン関連事業者などによる連携基盤となる可能性がある。
デジタルアセット市場の健全な成長に向けて、業界全体で金融犯罪リスクに対応する体制づくりがどのように進むのか注視したい。
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