2026年7月28日、東大発AIベンチャーのNABLAS株式会社は、音声の会話内容や文脈から特殊詐欺を検知する新技術を開発したと発表した。生成AIによる偽音声だけでなく生身の人間による詐欺も未然に防ぐ。
会話の文脈と行動パターンを分析 F1スコア94.8%の高精度を実証
AI総合研究所のNABLASは、音声領域における偽誤情報対策システムにおいて、会話の意図や文脈を読み解く先進的な技術を開発した。実際の詐欺通話等を用いた検証では、高い判別精度を示すF1スコア(※)94.8%という優れた実績を記録している。
従来の詐欺対策では、生成AIを用いたフェイク音声の識別や特定ワードの抽出といったルールベースによる判定が主流であった。しかし本技術では大規模言語モデル(LLM)を活用し、発信者の「行動パターン」と「会話の文脈」という独立した2つの軸から評価を行う。身元を偽る文言だけに頼らず悪意ある行動そのものを検知するため、過去のデータにない新たな手口にも対応可能だ。
警察や銀行といった正規の手続きを誤って判定するリスクも大幅に低減されている。Web会議や動画コンテンツなど多様な音声シーンにも応用可能で、多角的な詐欺防衛網を築く足がかりとなる。
※F1スコア:モデルの再現率と適合率の調和平均を表す指標で、機械学習の分類精度を評価するために用いられる。
社会実装の加速とセキュリティ向上 実務運用での誤検知対策が鍵
新技術の登場により、自治体や都道府県警察、金融機関における犯罪防止策は新たなフェーズを迎えると考えられる。巧妙化する特殊詐欺被害を抑止する強力なツールとなり、安心な社会の実現に寄与する可能性が高い。
実用化が進めば、銀行のコールセンターやオンライン取引における不正誘導の検知精度が大きく向上するだろう。業務フローに応じたカスタマイズ開発も可能とされており、現場の多様なニーズに柔軟に適合できる点は企業側にとって多大なメリットとなる。
一方で、導入にあたっては通話データのプライバシー保護やリアルタイム処理時のシステム負荷といった課題も想定される。また、正規の会話を誤って詐欺と判定する過剰反応のリスクをいかに低減し続けるかが、社会実装を円滑に進める上での焦眉の課題と言えよう。
同社は現在、さらなる精度向上と社会実装に向けて実証パートナーを幅広く募集している。官民連携の取り組みを通じて実環境での検証が進むことで、より堅牢な防犯インフラが構築される期待は大きい。