日本の一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、新たに「ウォレット・AI部会」を設立したと公表した。
ノンカストディアルウォレットやAI統合ウォレットを対象に、自主基準の策定や制度設計、申告分離課税の実現に向けた政策提言を進める方針である。
ウォレットとAIの制度整備へ本格始動
2026年7月1日に公表された内容によると、JCBAは「ウォレット・AI部会」を新設し、6月29日に第1回全体会合を開催した。
部会にはウォレット事業者や法律事務所など計37社51名が参加・登録し、設立の目的や運営体制、今後の検討方針について議論を行った。
背景には、日本の暗号資産制度が金融商品取引法への規制移管や、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業制度の開始など、大きな転換期を迎えていることがある。
ウォレットは暗号資産の保管だけでなく、DeFiやNFT、ステーブルコインなどのオンチェーンサービスを利用する重要な基盤として位置付けられている。
近年はAIエージェントによる取引提案や実行支援、ガス代の最適化、詐欺検知、MPCや生体認証を活用したシードレス認証など、新たな技術の導入も進んでいる。
一方で、利用者保護やAML/CFT(※)、プライバシー保護、AIが関与した取引の責任範囲、DEX接続UIの位置付けなど、制度上の課題も顕在化している状況だ。
部会では、ノンカストディアルウォレットに関する利用者保護・安全管理の自主基準や制度要件の整理を進めるほか、AIを活用した詐欺検知やリスク説明のベストプラクティス、秘密鍵管理技術、申告分離課税制度の実現に向けた政策提言などを検討する予定だ。
今後は金融機関や法律事務所、監査法人、AI・セキュリティ事業者などの知見を集約し、政策提言や業界向け資料を段階的に公表していくとしている。
※AML/CFT:マネーロンダリングおよびテロ資金供与を防止するための国際的な対策の総称。
制度整備が普及を後押しする可能性も
業界横断で自主基準やベストプラクティスの議論が進めば、事業者ごとの対応にばらつきが生じにくくなり、利用者にとってもサービスを選びやすい環境につながる可能性がある。
AI機能を備えたウォレットの普及が進むなかで、一定の指針が示される意義は小さくないだろう。
また、申告分離課税に関する論点整理や政策提言が継続的に行われることは、暗号資産市場を巡る税制議論を前進させる一因になり得る。
税制や制度面の予見性が高まれば、新たなサービス開発や企業の参入判断にもプラスに働く余地がありそうだ。
一方で、AIとウォレットの融合は技術革新の速度が速く、新たなサービスやリスクが短期間で登場する可能性もある。
自主基準だけでは対応が難しいケースも考えられるため、技術や制度の変化に応じて継続的な見直しが求められる場面も出てくるかもしれない。
さらに、ウォレットは国内だけでなく海外サービスとの接点も多く、各国の規制との整合性も重要なテーマになるとみられる。
今回の部会設立は、技術革新と制度整備の両面から議論を進める場として、今後の国内Web3市場の動向を見極める上でも注目される取り組みとなりそうだ。
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