2026年6月25日、海外の研究プロジェクト「Vesuvius Challenge」は、西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火で炭化した古代巻物を、AIと高精細X線技術を活用して一度も開かずに全文読解したと発表した。約2000年間封印されてきた文書の内容が初めて連続的に解読され、古代文献研究に大きな転換点をもたらす成果として注目されている。
AIで2000年前の巻物を開かず全文読解
今回読解されたのは「PHerc.1667」と呼ばれる巻物で、西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火によって埋没した古代都市ヘルクラネウムの図書館から出土した資料である。巻物は炭化したことで保存された一方、物理的に開くと破損するため、およそ2000年にわたり内容を確認できなかった。
研究チームは、高精細X線マイクロトモグラフィー(※)で巻物内部を三次元撮影し、AIによって複雑に巻かれたパピルスを仮想的に展開した。さらに機械学習を用いて炭化したパピルスに残る微弱なインクの痕跡を抽出し、約1.4メートル、22段に及ぶギリシャ語の本文を連続した文章として復元している。
解読された内容は、人間の本性や道徳的成長を論じるストア派哲学の倫理学書とみられ、紀元前2世紀頃の著作である可能性が高い。これまで断片的な単語や短い文章しか判読できなかったヘルクラネウム文書について、保存された本文を最初から最後まで継続して読み切ったのは世界で初めてとなる。
また研究チームは、別の巻物ではインクを三次元画像上で直接可視化することに成功し、さらに別資料では著者名と書名も特定した。解析データやAIモデル、ソースコードは公開されており、世界中の研究者が同じ技術を活用できる環境も整備されている。
※高精細X線マイクロトモグラフィー:対象物を破壊せずに極めて高い解像度で内部構造を三次元撮影するX線技術。文化財や医療、材料科学など幅広い分野で利用されている。
AIが古代研究を加速 課題は解読精度の検証
今回確立された手法は、現在も数百本残されている未開封のヘルクラネウム巻物の解読を大幅に加速させる可能性がある。哲学や文学、歴史に関する未知の古典文献が次々と明らかになれば、人類史や古代思想の理解がさらに深まることも期待される。
一方で、AIが抽出した文字情報は現時点でも古文書学者による検証を経て確定されており、判読結果を完全にAIへ委ねられる段階には至っていない。炭化による欠損部分も多く、文脈の解釈では今後も専門家による検証が重要な役割を担うと考えられる。
今後は、AIによる高速解析と人文学の専門知識を組み合わせた研究がさらに広がる可能性がある。文化財を傷つけることなく未知の文献へアクセスできる技術は、考古学や歴史学だけでなく、美術品や文化遺産の保存・解析など幅広い分野へ応用が進むことも期待される。
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