小田急電鉄は、踏切内に取り残された歩行者や自転車などをAIで検知し、列車の停止につなげる「AI踏切画像解析システム」を導入すると発表した。
まずは小田急線の4カ所で運用を始め、踏切事故の未然防止と安全対策の高度化を図る。
小田急、AI踏切画像解析を4カ所で導入
2026年6月22日、小田急電鉄は「AI踏切画像解析システム」を6月24日から導入すると発表した。
対象は南新宿駅~参宮橋駅間の南新宿2号、4号、5号踏切と、向ヶ丘遊園駅~生田駅間の向ヶ丘遊園9号踏切の計4カ所で、今後は運用箇所の拡大も検討していく方針だ。
このシステムは、既設の安全確認用カメラの映像をAIがリアルタイムで解析し、歩行者や車いす利用者、自転車、バイクなどを判別して動きを追跡する仕組みである。
遮断桿が下りた後も対象が踏切内に残っていると判断した場合、信号設備と連動し、接近列車にブレーキ動作を促す信号を送る。
同時に特殊信号発光機も点灯し、乗務員に危険を知らせる設計だ。
踏切内の状況が解消されれば、これらの対応は自動で解除される。
カメラ映像は踏切内の危険検知のみに用い、特定個人を識別する目的で利用されず、解析データは厳重管理の上1年以内に破棄するとしている。
開発は名鉄EIエンジニア、トヨタシステムズ、東邦電機工業が担い、2023年1月からの実証を経て導入に至った。
実証では、夜間や降雨といった屋外特有の環境変化に対応するため、検知精度の向上に取り組んだという。
小田急線の踏切ではこれまでも、警報機、遮断桿、安全確認用カメラに加え、非常ボタンや特殊信号発光機を全踏切に整備してきた。
さらに交通量の多い踏切には、主に立ち往生した自動車の検知を目的とする踏切障害物検知装置も設置している。
踏切安全は前進も運用拡大には検証が重要
今回の導入は、踏切内での危険検知を人の目や従来装置だけに頼らず、AIによる画像解析で補完する試みとして意義が大きいと考えられる。
特に高齢化や移動手段の多様化が進む中、歩行者や自転車を対象にした検知精度が高まれば、事故の兆候を早期に把握しやすくなる可能性がある。
また、既設カメラを活用できる点は、大規模な設備新設と比べて導入の柔軟性を高める要素になり得る。
障害物検知装置が未設置の踏切でも、既設カメラを活用した安全対策の選択肢として検討しやすくなるだろう。
一方で、鉄道の安全システムには高精度だけでなく安定稼働も欠かせない。
夜間や雨天以外にも、逆光や反射光、混雑時の複雑な動線など、現場ごとの条件に応じた検証が必要になると考えられる。
誤検知が増えれば列車運行への影響が出るおそれもあり、導入後の継続的なチューニングが重要になるだろう。
今後は4カ所での運用結果を踏まえ、どこまで横展開できるかが焦点になりそうだ。
AIを使った安全対策では、新技術を導入するだけでなく、実際の運用を通じて事故防止と安定運行を両立できるかを検証することが重要になるとみられる。
今回の取り組みが成果を示せば、鉄道業界全体で踏切安全の標準を引き上げるきっかけになるかもしれない。
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