2026年6月10日、日本総合研究所はNECとの包括的業務提携を発表した。SMBCグループが掲げる「ITトランスフォーメーション」の実現に向け、AIを前提としたIT基盤の再構築やレガシーシステム刷新を推進する。
SMBC、AI前提の金融基盤へ大転換
今回の提携は、SMBCグループの新中期経営計画(2026~2028年度)の重点施策であるITトランスフォーメーションを具体化する取り組みだ。SMBCグループの中核IT企業である日本総研と、AI・クラウド・セキュリティ分野で豊富な実績を持つNECが連携し、金融システム全体の刷新を進める。
両社は、基幹業務を担うレガシーシステムの刷新を共同で推進するほか、クラウドシフトの加速、オペレーション改革、先端AI・IT技術の共同実証、AIを前提とした開発プロセスの高度化という5つの領域に取り組む。
特徴的なのは、単なる既存システムの更新ではなく、企画・開発・運用の全工程をAI活用前提で再設計する点にある。共同でのプロジェクト運営や権限の相互付与によって意思決定の迅速化も図り、新たな金融サービスの創出スピード向上につなげる考えだ。
また、クラウド利用の拡大に伴い、AIを活用した脆弱性診断やパッチ適用の迅速化を進めるほか、セキュア・バイ・デザイン(※)の実践によるサイバーセキュリティ強化にも取り組む。SMBCグループは、変化する市場環境に対応できる柔軟かつ強靱な金融IT基盤の構築を目指している。
※セキュア・バイ・デザイン:システム開発の初期段階からセキュリティ対策を組み込み、設計そのものに安全性を組み込む考え方。金融や公共分野を中心に導入が進んでいる。
AI金融時代の競争力強化と課題
今回の提携によって期待されるメリットの一つとして、金融サービス開発のスピードと柔軟性の向上が挙げられる。AIによる業務自動化やシステム運用の効率化が進めば、現場は定型業務の負担を軽減し、提案業務や顧客対応など高付加価値領域へ人材を集中しやすくなる。新たな顧客体験の創出やサービスの高度化につながる可能性もあるだろう。
一方で、AIへの依存度が高まるほど、システム障害時の影響拡大やサイバー攻撃への対策、AI判断の透明性確保といった新たな課題が顕在化する可能性もある。金融インフラには高い信頼性が求められるだけに、技術導入のスピードとガバナンスの両立が、これまで以上に重要になるとみられる。
これまで金融業界では、DXの推進が競争力を左右する重要な要素の一つと捉えられてきた。しかし今後は、「AIを前提に事業やシステムを設計できるか」が新たな差別化要因になると考えられる。日本総研とNECの取り組みは、SMBCグループにとどまらず、日本の金融機関がAIネイティブ時代へどのように適応していくのかを占う試金石となりそうだ。
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