2026年6月8日、エスビー食品はスパイスコード株式会社との資本業務提携を発表した。食品開発で培った知見とAIエージェント技術を融合し、「おいしい」という感覚の理解と表現の高度化を目指す。経験に支えられてきた食品開発のあり方に変化をもたらす可能性がある。
エスビー食品、AI活用で食品開発を高度化
エスビー食品は、食品流通領域に特化したAI技術を手掛けるスパイスコードとの資本業務提携を発表した。長年にわたり蓄積してきた食品開発の知見と、同社のAIエージェント技術を組み合わせ、より高度な食品開発の実現を目指す。
背景には、消費者ニーズの多様化や商品開発サイクルの短縮、熟練人材が持つ知識の継承といった業界共通の課題がある。エスビー食品は経営戦略2033および第4次中期経営計画のもと、スパイス・ハーブに関するコアコンピタンスの深化と新たな価値創出を推進しており、その一環としてAI活用に着目した。
両社は、人の情動に基づく「おいしい」という感覚の構造を科学的に解明するとともに、AIを活用して食品開発の知見を拡張する基盤研究を共同で進める。蓄積されたノウハウを次世代へ継承しながら、その価値を高める仕組みの構築を目指す考えだ。
スパイスコードは、自ら食品流通事業を展開しながらAIエージェントを開発する企業である。ERPと連携した業務AIプラットフォーム「ロカルメ・オーダー」など、現場課題に即した実用的なプロダクトを提供している点を強みとしている。
AIが変える食品開発 創造性との共存が鍵に
今回の提携によって期待されるのは、これまで熟練者の経験や感覚に依存してきた暗黙知の可視化である。実際にどの程度実現できるかは今後の研究成果次第だが、食品開発の知見を体系化する試みとして注目される。知見のデータ化が進めば、開発期間の短縮や品質の安定化、人材育成の効率化につながる可能性がある。少子高齢化による人材不足への対応策としても関心を集めそうだ。
一方で、「おいしさ」は単なる数値では表現しきれない側面を持つ。食文化や個人の記憶、感情によって評価は変化するため、AIによる分析結果を過信すれば、画一的な商品開発に陥るリスクも否定できない。
今後は、AIを熟練者の代替としてではなく、発想を広げる支援ツールとして位置付ける考え方が重要になる可能性がある。人間の創造性とAIの分析能力が補完関係を築ければ、食品業界では新たな味覚体験や商品カテゴリーの創出が加速することも期待される。今回の提携は、日本の食品メーカーにおける「AIとの共創」の先行事例の一つとして、今後の動向を占うケースになるかもしれない。
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