2026年6月8日、東芝は、電子レシートサービス「スマートレシート®」に蓄積された購買ビッグデータを活用した販売予測AIを開発したと発表した。生成AIと独自のクラスタリング技術を組み合わせることで、新商品の販売数量予測において従来手法より誤差を約23%低減したという。
生成AIと購買データで需要予測を高度化
新商品の投入時には、市場がどのように反応するかを事前に見極めることが重要である。しかし近年は消費者の価値観や嗜好が細分化し、従来の販売予測モデルでは実際の需要を十分に捉えにくくなっていた。
こうした課題に対し、東芝は「スマートレシート®」に蓄積された300万人超の会員購買データを活用した新たな販売予測AIを開発した。特徴は、独自のクラスタリングAI(※)と生成AIを組み合わせている点にある。
まずクラスタリングAIが購買傾向の近い消費者を自動的にグループ化する。その後、生成AIが各グループに対し、新商品への関心度を示す「反応スコア」を算出する仕組みだ。個人単位で予測する場合と比べて計算量を大幅に抑えながら、多様な嗜好を反映した需要予測を実現できる。
従来の生成AIを用いた予測では、処理負荷の制約から一部データのみを利用するケースが多く、頻出パターンに偏る傾向があった。一方で本技術は、長期間にわたり蓄積された購買履歴を継続的に学習することで、市場環境や消費行動の変化を予測へ反映できる点が強みと言える。
※クラスタリングAI:大量のデータから特徴の近い対象を自動的に分類・グループ化するAI技術。マーケティングや顧客分析などで広く活用されている。
小売業の意思決定を変える一方で課題も
東芝の評価実験では、特定ジャンルの商品において販売数量予測と実販売数量の誤差を約23%低減できたという。予測精度の向上は、メーカーや小売業にとって在庫管理や販促計画の最適化につながる可能性がある。
特に食品や日用品の分野では、需要予測の精度が収益性に直結する。過剰在庫による廃棄コストや欠品による販売機会損失を抑えられれば、サプライチェーン全体の効率化も期待できる。また、AIが消費者の細かな嗜好変化を捉えられるようになれば、新商品開発や商品企画の高度化にも波及するだろう。
一方で、予測精度が向上したとしても市場の不確実性が完全になくなるわけではない。天候や社会情勢、突発的なトレンド変化など、過去データだけでは捉えきれない要因は依然として存在する。AIへの過度な依存は、かえって意思決定の柔軟性を損なうリスクも考えられる。
実購買データと生成AIを組み合わせた需要予測は、小売・消費財業界におけるAI活用の新たな方向性を示す事例となりそうだ。東芝は今後、対象ジャンルや予測期間を拡大しながら検証を進める方針であり、購買データ分析サービスへの展開も視野に入れている。
市場変化を先読みするAI競争は、今後さらに加速する可能性が高い。