VanEckが米国で初のBNB ETF申請へ 規制とステーキング収益の行方

2025年5月5日、米国の大手資産運用会社VanEck(ヴァンエック)が、暗号資産BNBを対象としたETFの申請書を米証券取引委員会(SEC)に提出した。
BNBトークンに特化したETFが米国内で承認されれば初となり、今後の規制環境や投資機会に大きな影響を与える可能性がある。
ステーキング収益も視野に BNB ETFがもたらす投資機会の拡大
VanEckが提出した「S-1」申請書によれば、本ETFは暗号資産取引所バイナンスのネイティブトークンであるBNBの価格を追跡し、ステーキングによる報酬や追加トークンも含めた収益を投資家に還元する構想となっている。
これは、従来のビットコインETFやイーサリアムETFとは異なり、DeFi的な機能も一部取り入れる試みである点が注目される。
BNBは2017年にバイナンスにより発行されたトークンで、同社のBNBチェーンを基盤とする。
現在は主に取引手数料の割引やDeFi、NFTサービスでの決済手段として利用されており、過去24時間での時価総額は839億ドル(約12兆円、1ドル=143円換算)に達し、暗号資産市場で第5位に位置している。
今回の申請が持つ最大の意味は、米国内においてBNBを正式な金融商品として位置づける先例となる可能性にある。
ステーキング機能がSECによって容認されるかどうかは、今後の暗号資産ETF全体の設計にも影響を与えるため、市場関係者はその審査の行方に注目している。
新委員長のスタンスがカギ 規制変化と市場の期待
SECはこれまで、ステーキングに対して慎重な姿勢を取ってきた。
特に前委員長ゲーリー・ゲンスラーの下では、イーサリアムのステーキングですら証券性の懸念が指摘されていた。
しかし、現在はポール・アトキンス新委員長の就任により、柔軟な判断が下される可能性があると見られている。
申請直後、BNBの価格は小幅ながら約0.27%上昇しており、市場はポジティブな反応を示している。
VanEckは次のステップとして「19b-4」書類(※)を提出する意向であり、これはSECに対して正式な判断を求める動きだ。
今回の申請は、BNBだけでなく、今後のSolanaやAvalancheといった他のスマートコントラクト型トークンに関するETF申請にも道を開く可能性がある。
規制の方向性が変われば、米国における暗号資産の本格的な金融商品化が加速し、機関投資家の参入をさらに後押しするだろう。
ただし、規制の方向性が未だ不透明である以上、拙速な期待は禁物である。
今回の申請は、まさに「市場と規制の力学の試金石」としての性格を帯びており、その結果次第ではETF市場の進展が一気に加速するか、あるいは再び足踏みすることも十分考えられる。
※「19b-4」書類:ETFなどの上場に関する規則変更を求める際に、証券取引委員会へ提出する正式書類。これによりSECの承認プロセスが開始される。