米ストラテジー社セイラー会長、同社オンチェーンの「資産証明公開は危険」と表明

2025年5月27日、米ストラテジー社のマイケル・セイラー会長が、「ビットコイン2025」の関連イベントで、オンチェーンによる資産証明の発行が「悪いアイデアだ」と発言したと発表された。
セキュリティ面でのリスクや財務評価の不完全性を理由に挙げている。
資産証明の公開に懸念 セキュリティと正確性が課題
米ストラテジー社のマイケル・セイラー会長は、資産証明(※)のオンチェーン公開について否定的な見解を示した。
同氏は2025年5月26日に開催された「ビットコイン2025」の関連イベントでの質問に応じ、資産証明の発行は「悪いアイデア」だと語った。
セイラー氏は、資産の存在だけを開示する形式が企業の全体的な健全性を示すには不十分である、という。実際の財務状況を評価するには負債情報の開示も不可欠であり、「資産証明だけでは片手落ちになる」と説明した。
さらに同氏は、資産証明の発行によってウォレットアドレスなどの情報が公開されることでハッカーや国家アクターからの標的になりやすくなると指摘。
これを「あなたの全ての子供の住所や銀行口座などを公開するようなものだ」と表現し、強い懸念を示した。
なお、同社は2025年5月19日から25日の間に4,020BTCを新たに購入し、保有総量は58万BTCを超えたと報告している。
※資産証明:暗号資産の保有残高などをブロックチェーン上で可視化する手法。第三者による検証が可能となる一方、プライバシーやセキュリティへの懸念が指摘されている。
資産証明の是非 信頼性とリスクの綱引きに
資産証明は2022年のFTX破綻以降、仮想通貨業界において透明性を確保する手段として注目されてきた。バイナンスやクラーケンといった主要取引所が導入を進めたが、信頼回復には至らず、その有効性に疑問を持つ声も根強い。
今回のセイラー氏の発言は、そうした資産証明を「信頼構築の道具」とする風潮に冷や水を浴びせるものだろう。
彼の主張は理にかなっているとの見方もできる。
実際に、資産証明の公開が投資家や企業のリスクを高める点は否定できず、特にビットコインを大量保有する企業にとっては重大な問題となる可能性がある。
また機関投資家は、資産証明よりも監査済みの財務諸表の法を重要視する。
上場企業であるストラテジー社は、四半期ごとにSECに提出する報告書を通じて、より網羅的な財務情報を提供しているため、資産証明に依存しない形での透明性が確保されているといえる。
今後、仮想通貨企業が信頼を獲得するには、形式的な証明だけでなく、セキュリティや法令遵守を含む総合的なガバナンスが求められるだろう。
資産証明の有用性とリスクのバランスをどのように取るかが、業界の信頼回復に向けての焦点になるだろう。