政府・日銀、デジタル円の「第2次中間整理」を公表 プライバシーと利便性の両立目指す方針

政府と日本銀行は2025年5月22日、日本円の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する関係府省庁・日本銀行連絡会議の「第2次中間整理」を公表した。プライバシー保護を前提とした「二層構造」を明示し、民間決済手段との共存策を制度設計の柱に据える方針が示された。
CBDCの基本構造を「二層型」に明示、民間との役割分担を具体化
政府と日本銀行は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の制度設計に向けた検討結果として、「第2次中間整理」を発表した。
今回の整理では、私法上の整理、プライバシーの保護とデータの利活用/公共政策上の要請の両立、民間決済手段との役割分担の3点が柱となった。
注目すべきは、CBDCの発行・運用に関して、日本銀行が直接利用者の情報を取り扱わない「二層構造」(間接型)を基本とする方針を示した点である。
仲介機関が日本銀行と利用者の間に立ち、顧客情報と台帳情報を分離管理することで、個人情報の取扱いを最小限に抑える構造が採用される。
一方、AML/CFT(※)などの公的要請には対応する必要があり、仲介機関には既存の民間決済手段と同様の対応策を求める方向性が示された。
また、CBDCと民間決済手段の役割分担に関しては、加盟店手数料や競争環境への影響を懸念する声が一部事業者から上がったものの、全国共通の決済インフラとしての期待も高い。現金と同様に高齢者や小規模店舗でも使いやすい設計とするほか、異なる決済手段間の相互運用を可能にする仕組みとしての活用も検討されている。
さらに、自治体によるデジタル地域通貨の発行などへの応用も視野に入っている。
さらに、CBDCを「法貨」として位置づける意向が明示され、現金と同等の法的効力と安全性を有するデジタル通貨の実現が見据えられている。
デジタル財産としてのトレーサビリティを活かし、不正利用時の権利回復の迅速化も可能になると期待されている。
今後の展望
制度設計の過程では、今後、仲介機関との役割分担やコスト負担、国際間決済(クロスボーダー)への対応といった論点が深掘りされる見通しだ。制度導入によって得られる利便性が、かかる社会的コストを上回るかどうかが最大の焦点になる。
一方で、プライバシー保護と公共的要請の両立という課題は依然として重く、特に仲介機関が担う責務と監督体制の明確化が求められる。民間との競合関係も避けられず、過剰な市場圧迫を避ける制度調整が不可欠となる。
なお、今回の整理はあくまで検討状況の整理であり、CBDCの導入を確定するものではないという。今後の国内外の技術動向や経済状況を踏まえ、導入の是非を含めた最終判断が行われる予定である。
制度の全体像が少しずつ明らかになる中で、今後は「使われるCBDC」となるための現実的な制度設計力が問われることになりそうだ。
※AML/CFT:
Anti-Money Laundering / Counter Financing of Terrorismの略。マネーロンダリング及びテロ資金供与の防止策として、金融機関に課される義務。