Oculus創業者ラッキー氏、Metaと軍用AI・XRシステム共同開発へ

2025年5月29日、米国の軍需スタートアップAnduril Industriesは、米MetaとAI搭載XR兵器システムの共同開発に乗り出すと発表した。
Oculus共同創業者パルマー・ラッキー氏が率いる同社とMetaの協業は、米軍向け次世代戦闘技術の中核を担う見込みだ。
MetaとAnduril、戦闘支援用XR武器を共同開発
米Oculus VRの共同創業者であり、現在はAnduril IndustriesのCEOを務めるパルマー・ラッキー氏が、かつて自ら売却したMeta(旧Facebook)と再び手を組んだ。
発表によれば、両社は米軍向けにAIとXR(※)を組み合わせた次世代戦闘支援ツールを共同開発するという。
本システムは、「戦闘員に高度な知覚能力を与え、自律型兵器プラットフォームを直感的に操作できる統合XR製品」として設計されている。視覚情報の拡張や戦術的状況のリアルタイム提示が可能になれば、戦場での判断速度と精度は飛躍的に向上すると見られる。
今回の協業は、かつてIVAS(統合視覚拡張システム)として知られていた米陸軍の次世代プログラム「SBMC Next」の一環である。
総額220億ドル規模の本事業は当初Microsoftが主導していたが、今年2月、Andurilが新たに開発契約を受託し、Microsoftはクラウド支援に専念する形となった。
ラッキー氏は「またMetaと仕事ができて嬉しい。私の使命は戦闘員をテクノマンサーに変えることだった。」と語っている。
※XR:VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)を含む「クロスリアリティ」技術の総称。
※Llama:Metaが開発した大規模言語モデル。
軍事×民間テックの融合 利便性と倫理の課題
今回の提携は、テック企業が国家安全保障領域に深く関与する事例として注目できる。Metaはこれまで民生向けの技術開発に主軸を置いてきたが、AIやXRを通じた軍事応用への参入は、今後の戦略転換を示唆する可能性がある。
メリットは明確だ。
現場の兵士がXRグラスを通じて戦況を可視化し、AIによるリアルタイムな分析・指示を受けられれば、生存率と任務成功率の大幅な向上が見込まれる。
また、Metaにとっても、自社技術の防衛用途展開は新たな収益源となり得るだろう。
一方で、倫理的な懸念も考えられる。
Metaのような巨大プラットフォームが軍事技術を提供することに対し、「民間テクノロジーの軍事転用が正当化されるのか」といった批判の声も上がるのではないだろうか。これまでもAI兵器に関する国際的な規制論議は続いているが、今回の提携が火種になる可能性も否定できない。
今後は、米政府と民間企業との協業モデルが他国にも波及する可能性もあるが、技術革新と安全保障のバランスが、世界的な課題として浮上していくと考えられる。