エヌビディアCEO「中国へのAI半導体流出に証拠なし」 トランプ政権の規制緩和を歓迎

2025年5月17日、米国のエヌビディアCEOであるジェンスン・フアン氏は、同社のAI半導体が中国市場に流出している証拠はないと明言した。
AI輸出規制を撤廃したトランプ政権の方針を歓迎する姿勢も示しており、国際市場での事業継続に向けた自信を示した形だ。
「密輸は不可能に近い」 製品構造と顧客信頼に基づくフアンCEOの主張
フアンCEOは、自社のAI半導体が中国に流出しているとの指摘に対し、「AI半導体流出の証拠はない」と明言した。
最新の主力製品は、最大72基のGPUと36基のプロセッサーを搭載する同社の最新システムは、重量が約2トンにも及び、密輸は現実的ではないという。また、同氏は顧客の意識の高さにも言及した。輸出規制を順守するという責任感が浸透しており、自主的に監視体制を構築していると説明している。
さらに、同氏はバイデン政権下で導入された「AI拡散ルール」が、こうした製品の輸出に一定の制限を与えてきたことに言及。しかし現在は、トランプ政権によって規制が撤廃され、より柔軟な国際展開が可能となっている。
アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアでは、トランプ政権による規制緩和を受け、エヌビディア製技術の導入が進む見通しだ。これらの国々では、国家規模でAI能力の強化を進めており、数百万ドル規模の統合型システムが戦略的インフラとして位置づけられている。
一方で、シンガポール当局は、マレーシアに輸出されたサーバーに同社製半導体が搭載されているかどうかの調査に乗り出している。
規制緩和の追い風と“想定外の流通”リスク エヌビディアが直面する二重の現実
エヌビディアのフアンCEOによる「中国へのAI半導体流出に証拠なし」という主張は、同社の管理体制と製品特性に根ざした説得力を持つ。
最大2トンに及ぶ重量や構造的な大規模さから、密輸が現実的ではないという説明は一定の信頼を得やすい。
さらに、顧客側の規制遵守意識が高いとする点も、技術流出の懸念を抑える材料となっている。
一方で、技術のグローバルな広がりに伴い、「意図しない流通」への懸念が消えたわけではない。
実際、シンガポール当局がマレーシア経由のサーバーに対して調査を開始したことは、サプライチェーン上での透明性確保が依然として課題であることを示している。
ただし、グローバルな政治状況は流動的である。
仮に政権交代や安全保障上の懸念が再燃すれば、再び規制が強化されるリスクもある。
また、サーバー機器やソフトウェアを含む「二次的流通経路」による技術の迂回供給が問題化すれば、企業としての責任を問われる場面も出てくるだろう。