2026年7月6日、日立システムズは総合経費管理システム「Traveler’sWAN」にAIによる旅費精算支援機能を追加し、2026年10月からβ版を提供すると発表した。あわせて、2025年4月施行の国家公務員旅費法改正に対応した公共団体向け機能を強化し、愛媛県と静岡県の次期旅費システムとして採用が決定している。
AIが旅費精算を支援
「Traveler’sWAN」は、国内外の出張手配から旅費・経費精算、請求書支払いまでを一元管理できる総合経費管理システムで、900社超・125万人以上に利用されている。
今回追加されるAI機能では、利用者が自然言語で入力した内容や領収書情報を基に、AIが交通経路や必要項目を整理し、伝票作成を支援する。
例えば、「本社から電車でA社へ行き、帰りはタクシーで帰社した」といった入力から、AIが必要な精算情報を抽出し、備考欄への補完まで行う仕組みだ。さらに、申請日の重複や最短・最安経路から逸脱した申請、不自然な理由記載などを検知してアラートを出す「レビュー支援エージェント」も搭載される。
背景には、AI活用の拡大に加え、行政DX推進や人手不足への対応がある。特に2025年4月の国家公務員旅費法改正により、定額精算中心の制度から実態に即した実費精算への移行が進み、自治体や独立行政法人では旅費システム刷新の需要が高まっていた。
こうしたニーズを踏まえ、日立システムズは「委員旅費機能」「委員謝金機能」「自動車経路検索連携機能」など公共団体向け機能も強化している。
自治体DXとガバナンス強化へ
今回の強化版は、愛媛県の「次期旅費システム構築業務委託」および静岡県の「旅費計算システム再構築業務」で採用が決定した。自治体職員向けのヒアリングでは、AIによる入力支援だけでなく、規定チェックや不備検知によるガバナンス強化への期待が大きかったという。
日立システムズは、AI機能のβ版を2026年10月に提供し、利用者のフィードバックを反映した上で2027年3月に正式版をリリースする予定だ。最新版は「Microsoft Azure」上で提供され、生成AI機能には日本マイクロソフトの協力のもと「Microsoft Foundry Agent Service」(※)を活用する。
自治体にとっては、旅費精算の効率化だけでなく、不正防止やコンプライアンス向上といった統制面のメリットも期待できる。一方で、AIが提示した経路や判断をどこまで人が確認するか、誤検知への対応をどう設計するかといった運用面の課題も残る。
日立システムズは今後も公共団体向け機能を順次追加し、民間・公共の両市場で導入を拡大する方針である。「Traveler’sWAN」事業全体では2030年までに20億円規模への成長を目指しており、AIを活用した経費精算基盤が自治体DXの中核インフラとなる可能性がある。
※Microsoft Foundry Agent Service:Microsoftが提供する生成AIエージェント開発基盤。大規模言語モデルを活用し、業務システム向けのAIアシスタントや自動化エージェントを構築できるサービスである。