2026年5月18日、日本政府は地域ごとに重点産業を設定する「地域未来戦略」の素案を公表した。朝日新聞などによると、高市早苗政権は全国を10地域に分け、AIや半導体、ロケット、「空飛ぶクルマ」などを成長分野として指定。地方ごとに産業集積を進め、日本全体の成長力を引き上げる狙いである。
AI・宇宙・空モビリティーを地域別に重点化
今回の素案では、高市政権が掲げる「17の戦略分野」を軸に、各地域の既存産業や立地条件を組み合わせる構成となった。単なる地方創生ではなく、国家戦略として産業配置を再設計する動きと言える。
北海道では、次世代半導体企業ラピダスの工場建設を背景に、AI・半導体分野を重点産業に指定した。さらに、北海道東部で民間ロケット開発が進んでいることから、宇宙関連産業も対象に含まれる。半導体と宇宙を同時に強化することで、先端製造業の集積地化を狙う構図だ。
近畿圏では、「空飛ぶクルマ(※)」を含む空モビリティー分野が重点対象となった。大阪港周辺では離着陸場の整備や実証飛行が進んでおり、商用化を見据えた動きが加速している。
一方、四国では今治造船を中心とする造船産業を重視した。政府は地域ごとに異なる産業を明示することで、企業投資や人材流入を促進したい考えである。
※空飛ぶクルマ:電動化や自動運転技術を活用した次世代航空モビリティー。都市部の移動や物流用途が期待されており、「eVTOL(電動垂直離着陸機)」とも呼ばれる。
地方経済は「補助金型」から競争型へ進むか
今回の戦略が注目される理由は、地方政策の軸が「均等支援」から「重点投資」へ変化している点にある。従来の地方創生政策では幅広い地域支援が中心だったが、今後は成長可能性の高い分野に資源を集中する色合いが強まりそうだ。
特にAIや半導体は、データセンターや電力網、人材育成まで含めた大規模投資を伴う。関連企業が集積すれば、周辺産業やスタートアップにも波及効果が及ぶだろう。地方大学との連携強化や、技術人材の地域定着につながるとの期待もある。
一方で、地域間格差が拡大するリスクも否めない。重点産業に選ばれた地域へ投資や人材が集中すれば、それ以外の地域では産業空洞化が進む懸念が残る。特に、AIや宇宙産業は高度人材への依存度が高く、地方側に受け皿が不足すれば、構想だけが先行する可能性もある。
高市政権は6月に正式な「地域未来戦略」を決定する方針だ。地方経済政策は、補助金配分ではなく「どの地域が次世代産業の拠点になるか」を競う段階へ入りつつある。