2026年4月6日、米OpenAIは「超知能時代の産業政策」を公開した。サム・アルトマンCEOはAIによる急激な社会変化に対応するため、週休3日制や公共富裕基金などを柱とする新たな社会契約の必要性を提起した。
AI利益を再分配する新経済モデル
OpenAIが公表した13ページの提言は、AIによる生産性向上の果実を社会全体に分配する制度設計を中核に据える内容となっている。背景には、AIが人間の労働を代替することで給与課税が縮小し、既存の社会保障財源が揺らぐ可能性があるという問題認識がある。
これに対し同社は、企業収益や資本への課税を強化する方向性を示し、自動化によって労働者を代替した企業に対する「ロボット税(※)」の導入を検討課題として提示した。さらに、AI企業の成長による利益を集約する「公共富裕基金」の創設も打ち出している。
同基金はアラスカ州の恒久基金をモデルに、国民へ直接配当する仕組みを想定するもので、いわば“AI版ベーシックインカム”に近い発想といえる。加えて、失業保険や医療保険の拡充、転職時も福利厚生を維持できるポータブルベネフィットの導入も提案されており、労働を前提としない社会保障への転換を視野に入れている。
※ロボット税:企業がAIやロボットで人間労働を代替した場合、その分の利益に対して課される税。雇用減少による税収減を補う目的で議論されている。
週休3日とAI権利 恩恵とリスク
提言の中でも象徴的なのが、週32時間労働への移行、すなわち週休3日制の試験導入である。AIによる効率化の成果を企業だけでなく労働者にも還元する「効率化の配当」という考え方に基づくもので、生産性を維持したまま労働時間を削減する構想だ。
さらにOpenAIは、AIへのアクセスを電力やインターネットと同等の公共インフラと位置づけ、「AIへの権利」として保障すべきだと主張する。低コストまたは無料で利用できる基盤を整備し、個人や中小企業がAIにより淘汰されることのない環境を構築する必要があると指摘した。
一方で、リスクへの警戒も強い。アルトマン氏は今後1年以内に、AIを用いたサイバー攻撃や生物兵器開発といった重大脅威が顕在化する可能性に言及している。これを受け、危険なモデルを特定し封じ込める枠組みや、生成物の追跡を可能にする「AIトラストスタック」の整備が不可欠になるとした。
こうした提言の背景には、AIによる富の集中と失業拡大、そして同社自身への安全性批判がある。OpenAIは政策を“完成形”ではなく議論の起点と位置づけ、外部の知見を取り込む姿勢を示した。
超知能時代に向けた制度設計は、企業主導から社会全体の合意形成へと移行しつつあると言える。