2026年3月30日、理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター(AIP)が、生成AIを活用して制作した校歌を公開した。三重県桑名市の新設校「桑名市立 多度学園」で採用される予定で、児童・生徒とAIが共創した全国初の事例となる。
AIと児童が共創した校歌誕生
AIP音楽情報知能チームは、2024年に開発したAI作曲支援システムを活用し、地域と連携した校歌制作プロジェクトを実施した。対象は桑名市の4小学校と1中学校で、児童・生徒が主体となり楽曲制作に参加している。
体験授業では、子どもたちが計40曲の原曲を制作し、それらを1小節単位で分解して再構成した。組み合わせによって生まれたメロディは10の50乗通り以上に達し、九州大学 文化知能科学研究室の協力のもとAIが歌詞との適合度を分析したとされる。
さらに選抜された100通りのメロディから、東京藝術大学の金子 仁美 准教授らの協力により4曲の候補曲が制作された。最終的には音楽プロデューサーの小室哲哉が参加する選考で1曲が決定し、学生によるレコーディングを経て校歌として完成した。
創造の主役は人かAIか再定義 専門家でなくても楽曲作成できる手軽さ
今回の取り組みは、AIが単独で創作するのではなく、人間の発想を拡張するツールとして機能した。多数のメロディ候補を高速に生成・評価できることで、従来は専門家に依存していた作曲プロセスが民主化される可能性がある。
また、児童学生自身が校歌の作成に携わるという点でも、学校とその校歌に対して親近感を感じる要素となるだろう。
一方で、教育現場においては、子どもたちが創作に関わる機会を広げるメリットがある反面、創作の主体が曖昧になるリスクも無視できない。誰が「作者」なのかという著作権の帰属や、AIが生成した表現の独自性といった課題は今後さらに議論が必要になると考えられる。