2026年3月31日、自動車部品大手デンソーは東京都内で記者会見を開き、半導体大手ロームの買収について強い意欲を示した。中期経営計画も同時に公表され、AI分野を含む半導体事業の拡大が成長戦略の中核に据えられた。
ローム買収で半導体戦略を加速
デンソーの林新之助社長は、ローム買収について「技術的な親和性が高く、シナジー(※)が大きい」と述べ、実現に向けた姿勢を改めて強調した。両社は車載向け半導体で強みを持ち、電動化や自動運転の進展に伴い、その重要性は一段と高まっている。
同日に公表された2030年度までの中期経営計画では、半導体事業を成長の柱に位置付けた。車載用途に加え、人工知能(AI)や産業機器、民生分野への展開を進める方針であり、技術の横展開が前提となる戦略である。売上高8兆円以上、営業利益率10%以上という高い目標も掲げられた。
さらに、製造現場とAIの融合による生産性向上も打ち出された。副社長は2兆~4兆円規模の投資余力に言及しており、資本投下を伴う本格的な事業拡張に踏み込む構えといえる。
※シナジー:企業統合や提携によって単独では得られない相乗効果を生み出すこと。コスト削減や技術統合、新市場開拓などで企業価値の向上が期待される。
車載技術の外部展開は成長かリスクか
今回の戦略は、車載で培った半導体技術を他産業へ転用する点に特徴がある。品質や耐久性に優れる車載技術は、産業機器やAIインフラにも適用可能であり、競争優位の源泉となる可能性が高い。特にAI向け半導体は需要が急拡大しており、新たな収益基盤の構築につながると見られる。
一方で、事業領域の拡張にはリスクも伴う。AI半導体市場は米エヌビディアなどが先行しており、競争は極めて激しい。加えて、異なる用途への技術転用には設計思想や顧客要件の違いへの対応が不可欠であり、開発負担が増大する可能性がある。
ローム買収が実現すれば、設計から製造までの垂直統合が進み、競争力強化につながる余地は大きい。
巨額投資と市場競争のバランスをどう取るかが、今後の成否を左右する重要な分岐点となる。