2026年3月21日、日本のスクウェア・エニックスは米グーグルの生成AI「ジェミニ」をオンラインゲーム「ドラゴンクエスト10」に導入すると「ドラゴンクエストX 春祭り 2026」にて発表した。対話型AIキャラクターの実装により、プレーヤー体験の質が大きく変化する可能性がある。
ドラクエ10に対話AI実装へ
スクウェア・エニックスは、生成AIを活用した相棒キャラクター「おしゃべりスラミィ」を開発し、「ドラゴンクエスト10」に搭載する方針を明らかにした。プレーヤーがチャットで話しかけると、AIが音声を生成して応答し、文脈に応じた会話を行う仕組みである。これにより、従来の定型的なNPCとは異なる双方向の体験が実現する。
スラミィはゲーム画面の情報も分析し、強敵撃破やレアアイテム獲得といった状況に応じて自発的に話しかける機能を持つ。また、プレーヤーの進行状況に合わせ、次の目的地のヒントを提示するなど、ゲーム進行の支援も担う。ベータテストは実施予定で、3月30日まで参加者を募集している。
同作は2012年にシリーズ初のオンライン作品としてサービスを開始し、現在も月間数十万規模の利用者を維持する長寿タイトルである。一方で新規参入のハードルの高さが課題とされており、今回のAI導入はその解消を狙う施策と位置付けられる。開発責任者の安西崇氏は「孤独を感じず遊べる存在になる」と説明する。
また、スクウェア・エニックスはグーグル・クラウドと連携し、さらなるAI活用を進める方針を示した。シリーズ生みの親である堀井雄二氏も、将来的に戦闘キャラクターへのAI活用に意欲を示している。
没入感向上とリスク AIゲームの分岐点
今回のAIとゲームを融合させた取り組みは、従来は「敵の挙動制御や難易度調整」といった裏側の機能が中心だったゲーム体験を、「プレーヤーと直接対話することで体験そのものを設計する領域」へ拡張するものと言える。
特筆すべきは、個別最適化された体験の実現にある。プレーヤーごとに異なる進行状況や理解度に応じてガイドや会話が変化すれば、没入感は大きく高まる。特に長期運営型タイトルでは離脱防止や継続率向上に寄与する可能性がある。
一方で、リアルタイム性が求められるゲーム環境では、応答精度と制御のバランスが重要な課題になる。
今後3〜5年でゲームは大きく変わるとの見方もあり、AIは開発プロセスや運営効率にも影響を及ぼすと考えられる。開発コストの高騰が続く中で、生産性向上の手段としての価値も高まるだろう。
今回の事例は、ゲーム産業におけるAI活用のモデルケースとなる可能性がある。