米Googleは2026年3月10日、業務ツール群「Google Workspace」に生成AI「Gemini」を統合した新機能を発表した。DocsやSlides、Sheetsなどで自然言語の指示だけで文書や表、スライドを作成できるようになり、日常的な資料作成の自動化が大きく進む可能性がある。
GeminiがDocs・Sheets・Slidesを横断支援
今回のアップデートでは、Workspaceに含まれるGoogle Docs、Google Sheets、Google Slides、Google DriveにGeminiが組み込まれた。最大の特徴は、AIがインターネット上の一般情報だけでなく、ユーザーのメールやファイル、チャットなど社内データを参照して回答や資料を生成する点にある。
Docsでは、ユーザーがプロンプト(※)を入力するだけで、関連するメールやドキュメントから情報を引用しながら文書を作成する。例えば旅行計画や会議資料のテンプレートを指定すれば、Geminiが既存データを整理して文章としてまとめる仕組みだ。
Sheetsでは、表やグラフの生成、空白セルの自動入力などをAIが担う。ユーザーがセル範囲を指定し「Drag to fill with Gemini」を選択すると、必要な情報をAIが補完する。企業リストの表であれば、所在地やCEOなど公開情報を検索し、スプレッドシートを自動で埋めることも可能になる。
Slidesでも同様に、自然言語で説明するだけでスライドを作成できる。Geminiは選択した情報源をもとに構成を作り、既存のデザインに合わせて資料を生成する。
これらの機能は現在ベータ版として、米国のAIサブスクリプション利用者や一部のWorkspace顧客に英語で提供されている。
※プロンプト:生成AIに対して指示や質問を入力する文章。AIはこの入力内容をもとに文章や画像、コードなどの出力を生成する。
資料作成AIが常識に 効率化と依存の両面
今回の機能強化により生成AIが職場の標準ツールへと変化し、今までよりもさらに実用的になったと言えるだろう。従来は検索や文章生成が中心だったAIが、業務データを理解して資料作成まで担う段階に入ったと言える。
最大のメリットは生産性の向上だ。
会議資料や営業レポート、調査リストといった定型業務は、既存データの整理が大半を占める。AIがメールやドキュメントから必要情報を抽出すれば、資料作成にかかる時間は大幅に短縮される可能性が高い。特に情報整理が多いホワイトカラー業務では、作業時間の削減効果は大きい。
一方で、AIへの依存が進むリスクも無視できない。機密情報を含むデータをAIが扱う構図においては、企業側がデータ管理やアクセス制御を強化すべき手間が増える。
今後は、AIが個人の業務データを理解し支援する「パーソナルAI(※)」の競争が本格化するとみられる。
文書作成や分析、資料作成を横断的に担うAIが標準機能になれば、オフィスソフトの価値そのものが再定義されるだろう。
※パーソナルAI:ユーザーのメールや文書、履歴など個人のデータを理解し、業務や作業を継続的に支援するAIの概念。個人専用のデジタルアシスタントとして機能する。