2026年3月9日、中国の韓俊農業農村相は北京で開催中の全国人民代表大会(全人代)に関連した記者会見で、中国で使用されている農業用ドローンが2025年に30万機を超え、世界最多となったと明らかにした。中国政府はAIやロボットの導入を進め、食料安全保障の強化を図る方針である。
中国、農業ドローン30万機 AI農業拡大
中国の韓俊農業農村相は9日、北京の人民大会堂で記者団の質問に答え、中国国内で2025年に使用された農業用ドローンが30万機を超えたと明らかにした。農業分野におけるドローン導入規模としては世界最大とみられ、中国がスマート農業の導入で先行している状況が浮き彫りになった。
中国ではドローンだけでなく、収穫作業を担うロボットや人工知能(AI)を活用したレーザー除草ロボット(※)などの導入も進み始めている。
韓氏は会見で「14億人の人口を抱える国家にとって、国家の一大事業だ」と述べた。
中国政府はハイテク技術を農業分野に積極的に取り込み、農産物の安定供給体制を強化する方針を示している。
※レーザー除草ロボット:カメラやAIで雑草を識別し、レーザー照射によって除去する自動農業機械。農薬使用量の削減や作業の自動化を目的に開発が進められている。
AI農業の拡大 生産性向上と新たな課題
農業にドローンやAIを導入する最大のメリットは、生産性の大幅な向上にあると言える。
ドローンによる散布や監視、AIによる生育データ分析が普及すれば、農地ごとに最適な農薬量や収穫時期を判断できるようになり、こうした「精密農業」は収量の最大化と資源の効率利用を同時に実現する可能性が高い。
また、農業人口の減少に対する解決策としても期待される。中国では都市部への人口流出により農村の労働力不足が課題となっており、自動化技術の導入はその穴を埋める有効な手段になり得る。
一方で、技術導入にはコストや運用面の課題も存在する。高性能ドローンやAIシステムは初期投資が大きく、小規模農家にとっては導入ハードルが高い。加えて、農業データの管理や機械のメンテナンス体制など、新たなインフラ整備も必要になる。
それでも農業のデジタル化は世界的な潮流であり、中国の取り組みはその象徴的な事例と言える。
今後、AI農業の技術競争は各国で加速する可能性が高く、食料安全保障をめぐる新たな国家戦略の一部として位置づけられていくと考えられる。