2026年3月、米ブルームバーグは、米当局がエヌビディア製AI半導体「H200」の対中輸出について、1社当たり7万5000個の上限設定を検討していると報じた。実現すれば、中国テック大手のAI投資戦略に直接的な制約が生じる可能性がある。
H200対中輸出、個社7.5万個案
関係者によると、トランプ政権は中国企業が購入できるエヌビディアのAIアクセラレーター(※)「H200」を1社当たり7万5000個に制限する案を協議している。性能が類似するAMDの「MI325」も個別企業ごとの上限算定に含まれる見通しで、実質的に先端AI半導体の調達量を横並びで管理する枠組みとなる。
中国向け輸出総数は最大100万個に達する可能性があるが、これは規制策定の初期に設定された全体枠である。現在において実際の申請はアリババやバイトダンスなど少数の大手に集中しており、個社上限が導入されれば受領可能数量は合計でも数十万個規模にとどまる公算が大きい。7万5000個という水準は、両社が非公式に伝えていた希望数量の半分未満とされる。
半導体輸出を管轄する商務省産業安全保障局(BIS)はコメントを控え、エヌビディアやAMDも公式見解を示していない。
報道を受け、両社株は時間外取引で下落し、市場は規制強化リスクを意識し始めた。
※AIアクセラレーター:AIモデルの学習や推論処理を高速化する専用半導体。GPUなどを含み、大規模言語モデルの開発・運用を支える計算基盤を指す。
数量管理が生む戦略再編
個社ごとの数量制限は、中国大手の計算資源拡張に明確な天井を設けることになるだろう。大規模モデルの性能は投入できる演算能力に強く依存するため、調達制限はそのまま開発スピードの制約につながる。一方で、輸出総枠自体は維持されるため、中堅企業への分散供給が進み、中国国内のAIエコシステムが裾野型へ再編される展開も想定される。
米国側にとっては、全面禁輸よりも柔軟で精緻な管理が可能になる点がメリットである。特定企業への集中を抑えつつ、同時に安全保障上のリスクも抑制できるからだ。ただし規制が複雑化すれば、米半導体企業の販売機会は限定され、収益の不安定化を招く恐れもある。
中長期的には、中国企業が国産半導体開発を一段と加速させる誘因ともなり得る。数量で縛る政策は短期的な抑制策としては有効だが、技術自立を後押しする逆説的効果を生む可能性も否定できない。
AI覇権を巡る競争は、性能だけでなく「誰に何個売るか」という数量戦略の時代に入ったと言える。
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