2026年2月25日、韓国政府はAI分野で世界トップ3入りを目指す国家戦略「大韓民国AI行動計画」を確定したとKOREA WAVEが報じた。99の実行課題と326の政策勧告を軸に、制度・インフラ・研究開発を横断的に刷新する構想である。
99課題・326勧告の全容
国家人工知能戦略委員会はソウルで第2回全体会議を開き、AI行動計画、政府インフラのガバナンス革新、セキュリティ脆弱性対応制度、研究開発戦略「Kムーンショット(※)」など5案件を審議・議決した。AI行動計画は国家・社会全般にAIを組み込む包括的実行戦略であり、99の実行課題と326の政策勧告で構成される。
制度面では、創作者の権利を保護しつつ著作物のAI活用を促進する法整備を進める。情報セキュリティではホワイトハッカーと連携し、脆弱性の通報・措置・公開までを制度化する方針だ。企業に対応状況の公開を求める仕組みも導入される予定である。
行政分野では、AIとデータを活用し申請がなくても福祉給付につなげる仕組みを検討する。
また、政府インフラ再編も大きな柱だ。国家情報資源管理院の大田センターは2030年までに閉鎖し、公共データセンターの安全基準を民間水準以上へ引き上げる。機密情報は政府施設で管理し、敏感情報や公開データは民間クラウドへ移管する設計となる。
さらに科学技術副首相の下に関係省庁合同の専従組織を新設し、英国政府デジタル庁(GDS)を参考に中長期の統治体制を再設計する構えだ。
※Kムーンショット:韓国政府が推進する挑戦的研究開発戦略。AIを活用し科学技術の飛躍的進展を狙う国家プロジェクト群を指す。
国家主導AIの利点と統治リスク
今回の戦略は、AIを国家競争力の中核に据える明確な意思表示と言える。効果として、研究開発、法制度、インフラを一体で再設計することで、政策の断片化を防ぎ、産業界に長期的な予見性を与える効果が期待できる。特にKムーンショットによる挑戦的投資は、半導体やバイオと並ぶ成長エンジンを創出する可能性があると予測できる。
一方で、国家主導の設計は柔軟性を損なうリスクも抱える。クラウド移管やデータ再配置は効率化を促す反面、セキュリティ事故や主権問題が発生した場合の責任所在が複雑化しかねない。脆弱性情報の公開制度は透明性向上につながるが、企業側のコスト増大という副作用も想定される。
今回のプロジェクトのように、行政の自動化が進めば給付漏れの解消などの利点が見込まれるが、アルゴリズムの公平性や説明責任の確保は不可欠である。
99課題という網羅的設計が実装段階でどこまで機能するか。韓国の挑戦は、AI時代における国家モデルの先行事例となる可能性を秘めている。
