2026年2月19日、日本のCYBOとがん研有明病院などの研究チームは、AIを用いてがん細胞を判定する世界初の「AI細胞診」システムを開発したと発表した。研究成果は英科学誌「Nature」に掲載され、専門医と同等の精度を確認している。
3次元画像×AIで細胞を自動判定
今回のAI細胞診は、採取した細胞集団を高精度に三次元画像化し、人工知能(AI)が悪性度を解析する診断補助システムである。中核技術は「ホールスライド・エッジ・トモグラフィー(※)」で、標本を数十層にスキャンして立体的に再構成し、巨大な画像データを圧縮しながら高速処理する点に特長がある。
がん研有明病院の専門医らが、細胞核の形状や濃染性などを基準に悪性度分類を学習させた結果、実臨床で専門医と同等水準の判定精度を確認した。対象は子宮頸がん検診で、1万〜100万個規模の細胞群を正常、軽度異常、高度異常、がん細胞へと個別に分類できる。
国内では子宮頸がん検診を中心に年間約1000万件の細胞診が行われている。一方で、病理医や細胞検査士は慢性的に不足し、重なった細胞を顕微鏡で慎重に見分ける作業は大きな負担となってきた。
※ホールスライド・エッジ・トモグラフィー:大量の顕微鏡画像データを圧縮処理しながら、標本を高速かつ高精度に三次元再構成する技術。AIによる立体的特徴解析を可能にする基盤技術である。
診断標準化の光とAI依存の影
本技術が広く導入されれば、診断の客観性と再現性は大きく向上する可能性がある。AIが一次スクリーニングを担い、医師が最終判断を下す体制が確立すれば、見落としの低減と業務効率化を同時に実現できると考えられる。特に人材不足が深刻な地域医療では、診断体制の底上げにつながる公算が大きい。
一方で、AIの判定に過度に依存するリスクも無視できない。誤分類が発生した場合の責任所在、学習データの偏り、アルゴリズムの透明性確保など、医療AI特有の課題は残る。診断補助という位置づけを維持しつつ、継続的な精度検証と制度整備が不可欠である。
子宮頸がんの約9割はヒトパピローマウイルス(HPV)感染に起因し、発症までに長い時間を要する。細胞変化を定量化できるAI基盤は、将来的に他のがん種や予後予測への応用も期待される。
医療とAIの融合は、病理診断の標準を再定義する段階に入りつつある。
関連記事:
