2026年2月20日、東京都品川区は株式会社SHIFTと連携し、生成AIを活用した電話応対の実証実験を開始すると発表した。官民共創の枠組みを活用し、区民サービス向上と業務効率化を同時に狙う国内自治体の先進的な取り組みと言える。
生成AI活用の電話対応実証開始
品川区は、区民からの電話問い合わせに生成AIを活用した「自動応答型コンタクトセンターサービス」の実証実験を2月20日から開始する。問い合わせへの一次対応に加え、担当部署への取次ぎ、外国語での応対までを対象とし、実運用を見据えた精度と安定性を検証する方針だ。
本事業は、区と民間企業・大学などを結び付ける官民共創の仕組み「しながわシティラボ」を活用して実施される。これは外部の技術や知見を取り込み、社会課題の解決を図るオープンイノベーション(※)型の取り組みであり、今回の提案は公募の中から採択されたものとなる。
背景には、人口減少に伴う労働力不足と行政ニーズの高度化がある。区は令和5年度から対話型生成AIチャットや音声文字起こしサービスを導入してきたが、電話対応という負荷の大きい領域へと適用範囲を広げる。令和8年度に職員によるテスト運用を行い、回答精度が一定水準に達したことを確認したうえで、同年度前半の区民向け公開を目指す計画である。
※オープンイノベーション:自治体や企業が外部組織と連携し、技術やアイデアを共有して新たな価値や解決策を創出する手法。
利便性向上と誤回答リスクの行方
明確な利点として、生成AIによる電話自動応答が実用化すれば、区民にとっては待ち時間の短縮や24時間365日対応という明確な利点が生まれる。特に共働き世帯や外国人住民にとっては、時間や言語の制約が緩和され、行政サービスへのアクセス性は大きく向上するだろう。職員側も定型的な問い合わせから解放され、企画立案や個別相談といった付加価値の高い業務へシフトでき、人的リソースに余裕が生まれる。
一方で、生成AI特有の誤回答や不完全な情報提示というリスクは避けて通れない。行政分野では正確性と公平性が厳しく求められるため、回答ログの監査体制や継続的な学習データの更新が不可欠となる。住民の信頼を損なえば、DX推進そのものにブレーキがかかる恐れも否めない。
今回の実証は自治体における生成AI活用の到達点を測る試みと言える。成果が確認されれば、他自治体への横展開や標準モデル化が進む展開も想定される。
行政サービスは「人が対応するもの」という常識が、静かに書き換わる転換点になる可能性がある。
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