2026年2月20日、東京都品川区は株式会社WiseVineと連携し、生成AIを活用した予算編成および行政評価の実証実験を開始すると発表した。国内自治体による行政経営分野への本格的なAI適用として注目される動きである。
予算編成と行政評価にAI実装
本実証は、品川区が運営する官民共創のオープンイノベーション基盤「しながわシティラボ」を通じて採択された提案に基づき実施される。政策立案や予算編成、行政評価に特化したAIサービスを導入し、行政評価における分析支援の有効性を検証する取り組みだ。
具体的には、過去の行政評価データや関連資料を生成AIが横断的に分析し、類似事業の抽出や成果指標の比較を行う。これにより、評価の客観性と透明性の向上を図ると同時に、企画・財政部門の業務負担を軽減する。
従来は職員が手作業で行ってきたデータ整理や事業比較を自動化することで、政策立案や政策議論に充てる時間を確保する狙いである。
背景には、人口減少に伴う労働力不足という構造課題がある。行政サービスの質を維持するためには、単純なデジタル化だけでは不十分であり、意思決定プロセス自体の高度な自動化が求められる。品川区はこれまで対話型生成AIチャットや音声文字起こしを導入してきたが、今回はそれを予算編成と行政評価という中枢領域へ拡張する段階に踏み込む。
令和8年3月から複数回の検証を実施し、実証結果を踏まえて行政経営分野における生成AI活用の可能性を検討していく方針だ。
行政経営はAI前提へ進化するか
予算編成と行政評価は自治体経営の根幹であり、そこにAIが組み込まれる意義は大きい。定量的な比較や横断分析が迅速に行えるようになれば、説明責任の強化や政策の優先順位付けの高度化につながる可能性がある。データに基づく意思決定が進めば、限られた財源の最適配分にも寄与すると考えられる。
一方で、生成AIの出力をどこまで信頼し、どの段階で人間が介在するのかという統治上の課題も浮上する。学習データの偏りや推論過程の不透明性は依然として指摘されており、最終判断は職員が担う体制が不可欠だ。AIは意思決定の代替ではなく補助線であるという前提を崩せば、責任の所在が曖昧になるリスクもある。
今回の実証が成果を上げれば、他自治体への横展開が進む可能性は高い。
今後、行政運営が経験と勘に依拠するモデルから、データとAIを前提とするモデルへ移行する転換点となるかどうかが問われている。
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